71話 『一緒にいられれば』 ページ24
キリトside
俺の座る揺り椅子の肘掛にちょこんと腰を乗せ、小さな拳でぽかぽか叩いてくる。
キリト「悪かった、悪かったってば!つい売り言葉に買い言葉で……」
シュン「本当に悪かったよ」
リュウ「そんな怒んなって」
拳をつかまえ、軽く握ってやるとようやくおとなしくなったが、かわりにぷくっと頬を膨らませる。その様子が可愛くて、笑いがこみあげてくるのを苦労して呑み込む。
キリト「大丈夫だよ、一撃終了ルールでやるから危険はないさ」
シュン「それに、まだ負けると決まったわけじゃないし……」
サクラ「『う〜〜……』」
肘掛の上ですらりと長い脚を組み、サクラと一緒にランカが唸る。
アスナ「……こないだキリト君の《二刀流》とシュン君の《黒刀》を見た時は、別次元の強さだって思った。でもそれは団長の《神聖剣》も一緒なのよね……。あの人の無敵っぷりはもうゲームバランスを超えてるよ。正直どっちが勝つか判んない……」
サクラ「でも、どうするの？負けたらアスナとランカがお休みするどころか、私たちがKoBに入らなきゃならないのよ？」
キリト「考えようによっちゃ、目的は達するとも言える」
アスナ,サクラ「『え、なんで？』」
少しの努力で強張る口を動かし、俺は答えた。
キリト「その、俺は……ランカといられれば、それでいいんだ」
シュン「俺も、あ……アスナといられればそれで……」
以前なら逆さに振っても出てこないような言葉だ。ランカとアスナは一瞬きょとんと目を丸くしたが、やがてぼっと音がしそうなほどに頬を赤くし、なぜかそこを再び膨らませると椅子から降りて窓際に歩いていってしまった。
呆れたようなため息をついたサクラはリュウの隣の椅子にどかっと座ると足を組んでリュウを見た。
サクラ「で、あんたは？」
リュウ「俺？俺は……売られたケンカを買っただけ」
サクラ「こんの、単純バカ!!」
へらっと笑って言ったリュウにサクラの拳が入った。
背を向けて立つアスナとランカの肩越しに、夕暮れのアルゲードの活気に満ちたざわめきがわずかに流れ込んでくる。
言ったことは正直な気持ちだったが、ギルドに所属するのはやはり抵抗がある。以前一度だけ所属した、今は存在しないギルドの名を思い出して、胸の奥に鋭い痛みを覚える。
まあ、簡単に負ける気はないさ……と俺は胸の中で呟き、椅子から離れてランカの隣に立った。しばらくして、右肩に、ぽすっと軽く頭が預けられた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 183人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さきっち
| 作成日時：2018年3月5日 0時
