【SAO】桜の舞姫 -アインクラッド編-Part2 (ページ3)

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50話　『The Gleameyes』ページ3

貴方side

ボボボボボ……という連続音と共にまた二つ炎が灯った。そしてもう一組。さらにもう一組。
炎の道ができあがる。最後に一際大きな火柱が吹きあがり、同時に奥行きのある長方形の部屋全体が薄青い光に照らし出された。かなり広い。マップの残り空白部分がこの部屋だけで埋まるサイズだ。

僕とアスナは緊張に耐えかねて、キリト君とシュンの右腕にぎゅっとしがみついた。激しく揺れる火柱の後ろから徐々に巨大な姿が出現している。

見上げるようなその体軀は、全身縄のごとく盛り上がった筋肉に包まれている。肌は周囲の炎に負けぬ深い青、分厚い胸板の上に乗った頭は、人間ではなく山羊のそれだった。

頭の両側からは、ねじれた太い角が後方そそり立つ。眼は、これも青白く燃えているかのような輝きを放っているが、その視線は明らかにこちらにひたと据えられているのが解る。下半身は濃紺の長い毛に包まれ、炎に隠れてよく見えないがそれも人ではなく動物のもののようだ。簡単に言えばいわゆる悪魔の姿そのものである。

入り口から、奴のいる部屋の中央まではかなりの距離があった。にもかかわらず僕たちは、すくんだように動けなかった。今までそれこそ無数のモンスターと戦ってきたが、悪魔型というのは初めてだ。色々なRPGでお馴染みと言ってよいその姿だが、こうやって《直》に対面すると、体の内側から湧き上がる原始的な恐怖心を抑えることができない。

おそるおそる視線を凝らし、出てきたカーソルの文字を読む。《The Gleameyes》、間違いなくこの層のボスモンスターだ。名前に定冠詞がつくのはその証である。グリームアイズーーー輝く目、か。

そこまで読み取った時、突然青い悪魔が長く伸びた鼻面を振り上げ、轟くような雄叫びを上げた。炎の行列が激しく揺らぎ、びりびりと振動が床に伝わってくる。口と鼻から青白く燃え上がる呼気を噴出しながら、右手に持った巨大な剣をかざしてーーーと思う間も無く、青い悪魔はまっすぐこちらに向かって、地響きを立てて猛烈なスピードで走り寄ってきた。

キリト,シュン「うわあああああ!」

アスナ「『きゃあああああ!』」

僕たちは同時に悲鳴を上げ、くるりと向き直ると全力でダッシュした。ボスモンスターは部屋から出ない、という原則を頭では判っていても、とても踏みとどまれるものではない。鍛え上げた敏捷度パラメーターに物を言わせ、僕とキリト君とアスナとシュンは長い回廊を疾風のごとく駆け抜け、遁走した。