49話 『ボス部屋』 ページ2
貴方side
薄青い光に照らし出される回廊の様子を注意深く観察してみる。
下部では赤茶けた砂岩でできていた迷宮だが、登るにつれいつのまにか素材が濡れたような青味を帯びた水路の中に没している。総じていえば、オブジェクトが《重く》なってきているのだ。マップデータの空白部分もあとわずかである。僕の直感が正しければ、この先には多分ーーー。
回廊の突き当りには、灰青色の巨大な二枚扉が待ち受けていた。扉にも、円柱と同じような怪物のレリーフがびっしりと施してある。全てがデジタルデータで造られたこの世界だが、その扉からは何とも言いがたい妖気が湧き上がっているように感じられてならない。
僕たちは扉の前で立ち止まると、顔を見合わせた。
アスナ「……これって、やっぱり……」
シュン「多分そうだろうな……ボス部屋だ」
僕とアスナはぎゅっとキリト君とシュンのコートの袖を摑んだ。ちなみに言うが僕はキリト君のコートでアスナはシュンのコートだ。
『どうする……？覗くだけ覗いてみる？』
キリト「……ボスモンスターはその守護する部屋からは絶対にでない。ドアを開けるだけなら多分……だ、大丈夫……じゃないかな……」
その自身なさそうに言うのやめて欲しい。
シュン「一応転移アイテム用意しとくか」
キリト「そうだな」
男二人の意見に僕とアスナは顔を見合わせて頷くとスカートと羽織のポケットから青いクリスタルを取り出した。キリト君とシュンもそれにならう。
キリト「いいな……開けるぞ……」
右腕を僕に引っ張られたまま、キリト君は結晶を握りこんだ左手を鉄扉にかけた。現実世界なら今頃掌が汗でびっしょりだろう。
ゆっくりと力を込めると、僕たちの身長の倍はある巨大な扉は思いがけず滑らかに動き始めた。一度動き出したあとは、こちらが慌てるほどのスピードで左右の扉が連動して開いていく。僕たちが息を詰めて見守る中、完全に開ききった大扉はずしんという衝撃と共に止まり、内部に隠していたものをさらけ出した。
ーーーと言っても内部は完全な暗闇だった。僕たちの立つ回路を満たす光も、部屋の中までは届かないらしい。冷気を含んだ濃密な闇は、いくら目を凝らして見透かすことができない。
キリト「……」
キリト君が口を開こうとした瞬間、突然入り口からわずかに離れた床の両側に、ボッと音を立てて二つの青白い炎が燃え上がった。思わず四人同時にビクリと体をすくませてしまう。
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作者名：さきっち
| 作成日時：2018年3月5日 0時
