【SAO】桜の舞姫 -アインクラッド編-Part2 (ページ1)

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48話　『街びらき』ページ1

キリトside

キリト「ああ。74層のボスはまだ誰も見たことないんだぜ。普通は偵察を重ねた上でボスの戦力と傾向を確認して、巨大なパーティーを募って攻略するもんだろ」

アスナ「ボス攻略だけはギルド間で協力するもんね。あの人たちはそうする気かな……？」

『どうかな……。まあ、連中もぶっつけでボスに挑むような真似はしないと思うよ。僕たちも急ごうか』

キリト「そうだな。中でかち合わなきゃいいけど」

俺はランカと密着した状況を名残惜しく思いながら立ち上がった。コートから出たランカの隣でシュンのコートから出たアスナが寒そうに体をすくめる。

アスナ「もうすぐ冬だねえ……。わたしも上着買おっかな。それどこのお店？」

シュン「え……あーたしかアルゲート西区のプレイヤーショップだったと思うけど」

『終わったら行く？』

アスナ「うん!」

嬉しそうに頷いたアスナはランカと共に身軽な動作で三メートル下の小路に飛び降りた。俺とシュンもそれにならう。パラメータ補正のお陰でこのくらいの高さならないも同然だ。

太陽がそろそろ中点に達しようという時刻になっていた。俺たちはマップに気を配りつつ、可能な限りのスピードで先を急いだ。

幸い一度もモンスターに遭遇することなく森を抜けると、そこかしこに水色の花が点在する草原が広がった。道は真ん中を貫いて西に伸び、その先に七十四層の迷宮区が威容を見せつけるように屹立している。

この迷宮区の、たいがい最上部にはひときわ大きな部屋があり、次層ーーーこの場合は七十五層へと繋がる階段を凶悪なボスモンスターが守護しているはずだ。そこを突破して次層の主街区に到達し、転移門をアクティブ化すれば晴れて一フロアの攻略達成となる。

《街びらき》の時は新たな風物を求めてプレイヤーが下層のあちこちから殺到し、街区全体がお祭り騒ぎとなってそれは賑やかなものだ。現在の最前線七十四層の攻略が開始されて今日で九日目、そろそろボスの部屋が発見されてもいい頃ではある。

草原の向こうにそびえ立つ巨塔は、赤褐色の砂岩で組み上げられた円形の構造物だった。俺もランカもシュンもアスナももう何度も訪れている場所だが、徐々に近づくにつれ、天を覆い隠さんばかりの巨体に圧倒されずにはいられない。これがアインクラッド全体の百分の一の高さなのだ。願って詮無いことではあるが、いつか外部から浮遊巨大城の全景を眺めてみたいというのが俺の密かな夢だった。