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42話 『武器破壊』 ページ45

貴方side


二人の距離が相対的に凄まじいスピードで縮んでいく。だが、同時に僕の知覚も加速され、徐々に時間の流れがゆるくなるような感覚を味わう。これがSAOシステムアシストの結果なのか、人間本来の能力なのかは判らない。ただ、僕の目には剣技を繰り返す奴の全身の動きがはっきりと見て取れる。

振り下ろされたクラディールの大剣を《蓮華》で弾いて、その隙に弾いた大剣の横腹に《桜華》を叩きつけた。凄まじい量の火花。

武器と武器の攻撃が衝突した場合のもうひとつの結果、それが《武器破壊》である。

果たしてーーー耳をつんざくような金属音を撒き散らし、クラディールの両手剣がその横腹からヘシ折れた。爆発じみた派手なライトエフェクトが炸裂する。
そのまま僕と奴は空中ですれちがい、もと居た位置を入れ替えて着地。回転しながら宙高く吹っ飛んでいった奴の剣の半身が、上空できらりと陽光を反射したかと思うと、二人の中間の石畳に突き立った。直後、その剣先とクラディールの手に残った下半分が、無数のポリゴンの欠片となって砕け散った。

しばらく間、沈黙が広場を覆った。見物人は皆口をぽかんと開けて立ち尽くしている。だが僕が着地姿勢から体を起こし、顔にかかった髪の毛を払ってニヤリと微笑むと、わっと歓声が巻き起こった。

すげえ、いまの狙ったのか、と口々に一瞬の攻防を講評しはじめるのを聞き、僕はため息を呑み込んだ。

《蓮華》と《桜華》を両手に下げたまま、背を向けてうずくまっているクラディールにゆっくりと歩み寄る。白いマントに包まれた背中がぶるぶるとわなないている。わざと音を立てて剣を背中の鞘に落としながら、僕は小声で言った。


『武器を替えて仕切りなおすなら付き合うけど……どうする?』


クラディールは僕を見ることなく、両手で石畳に爪を立てておこりのように体を細く震わせていたが、やがて軋るような声で「アイ・リザイン」と発声した。別に日本語で《降参》や《参った》でもデュエルは終了するのだが。

直後、開始の時と同じ位置に、デュエルの終了と勝者の名を告げる紫色の文字列がフラッシュした。再びワッという歓声。

僕の近くにキリトくんが来て、お疲れ様と頭を撫でてくれた。ちょっと恥ずかして俯くと、クラディールがよろけながら立ち上がるので僕とキリト君はクラディールの方に顔を向けた。

クラディールはギャラリーの列に向かって喚いた。


クラディール「見世物じゃねぇぞ!散れ!散れ!」

43話 『憎悪の視線』→←41話 『アバランシュ』



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みさっと - アドバイスです。 もう少し書くのに間を開けてわどうですか? 内容は、凄く好きです! (2018年4月8日 17時) (レス) id: 0bc1c5e779 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さきっち | 作成日時:2018年2月18日 1時

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