24話 『シェフ捕獲』 ページ27
貴方side
転移門のある中央広場から西に伸びた目抜き通りを、人ごみを縫いながら数分歩くことすぐにその店があった。五人も入ればいっぱいになってしまうような店内には、プレイヤーの経営するショップ特有の混沌っぷりを醸し出した陳列棚が並び、武器から道具箱、食料までがぎっしりと詰め込まれている。
店の主はと言えば、真っ黒くろすけの人と話していた。その後ろ姿に近寄ろうとすると、何かを売っているのが見えた。それに顔を見合わせた僕とシュンは真っ黒の人の後ろに近寄り、肩をポンッと叩いた。
『キーリト君』
すると《黒の剣士》の異名を取るキリト君は左肩に触れたままの僕の手を素早く摑むと、振り向きざまに言った。
キリト「シェフ捕獲」
シュン「『は?』」
何の話?
シュンと一緒に怪訝そうな顔をするとキリト君の向こう側からエギルが顔を出した。
エギル「ランカにシュンじゃねぇか。今回はどうした?」
シュン「いや、ちょっといらない防具とか売ろうと思ってたんだけど…」
ちらりと僕とキリト君に視線を向けるシュンを見て僕はキリト君を振り返った。
『キリト君、シェフって何なの?』
するとキリト君は僕の手を離しながら口を開いた。
キリト「あ、そうだった。お前いま、料理スキルの熟練度どのへん?」
『先々週に《
キリト,シュン「なぬっ!」
あ、こいつらいま、絶対アホかと思った。絶対思った。
キリト「……その腕を見込んで頼みがある」
キリトくんは手招きをすると、アイテムウインドウを他人にも見える可視モードにして示した。訝し気に覗き込んだ僕とシュンは、表示されているアイテム名を一瞥すると眼を丸くした。
シュン「『ラ、ラグー・ラビット!?』」
キリト「取引だランカ。こいつを料理してくれたら一口食わせてやる」
キリト君が言い終わらないうちに隣で何か考え込んでいるシュンを無視して僕はキリト君の胸倉をがしっと摑んだ。そのまま顔を数センチの距離までぐいっと寄せて、
『は・ん・ぶ・ん!!』
思わぬ不意打ちにドギマギしたキリト君はこくこくと頷いた。それにやったと左手を握る僕の隣でキリト君が顔を真っ赤にしながら、あれは反則だろ…!!と呟いていたのを僕は知らない。
『ってか、シュンどうし……Σぐはっ!』
唐突に後ろからの衝撃。視界の端に見えた栗色の髪で僕に突進してきた人の正体がわかった。てか抱きしめる力が強くて痛いのだが。
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みさっと - アドバイスです。 もう少し書くのに間を開けてわどうですか? 内容は、凄く好きです! (2018年4月8日 17時) (レス) id: 0bc1c5e779 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきっち | 作成日時:2018年2月18日 1時