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22話 《スキル》 ページ24

貴方side


それでも、男がゲーム世界から消えたあとも、この単純な決着の誘惑に身を任せる者は散発的に出現した。僕を含めたほとんど全てのプレイヤーは、SAO内での《死》に実感を持つことがどうしてもできなかった。

それは現在でも変わらないだろう。HPがゼロになり、体を構成するポリゴンが消滅するその現象は、あまりにも僕たちが慣れ親しんだ、いわゆる《ゲームオーバー》に近似しすぎていた。多分、SAOにおける死の意味を本当に悟るには、実際に体験する以外の方法はないのだ。

その希薄感が、プレイヤーの減少に拍車をかける一因となったのは問題いない。


さて、《軍》やそれ以外の集団に属したプレイヤー、特の待機組に属した者たちが遅まきながらゲームの攻略を開始するにつれて、やはりモンスターとの戦闘で命を落とす者も現れはじめた。

SAOでの戦闘には、多少の勘と慣れが必要になる。自分で無理に動こうとせずシステムのサポートに《乗っかる》のがコツと言えるだろうか。

例えば、単純な片手直剣上段斬りでも、《片手直剣スキル》を習得してソードスキルリストに《上段斬り》を備えた者が、その技をイメージしながら初期モーションを起こせば後はシステムがほぼオートでプレイヤーの体を動かしてくれるのに対し、スキルのない者が無理やり動きを真似ようとしても、振りは遅いわ攻撃力は低いわでおおよそ実戦で使えるシロモノにはならない。つまりある意味では格闘ゲームでコマンドを出すのに似ていると言える。

が、それに馴染めない者たち握った剣をやたらと振り回すばかりで、初期状態で習得できる基本の単発技を出していれば勝てるはずのイノシシやオオカミに遅れをとる結果となった。

それでも、HPがある程度減った時点で戦闘に見切りをつけて離脱、逃亡していれば、死という結果を招くことはなかったはずなのだがーーー。

スクリーンモニタを通して2Dグラフィックの敵を攻撃するのとは違い、SAOでの戦闘はその圧倒的なリアリティゆえに原始的な恐怖を呼び起こす。どう見ても本物としか思えないモンスターが、凶悪な牙をむき出して自分を殺そうと襲ってくるのだ。

シュンの話では、ベータの時ですら戦闘でパニックを起こす者がいたというのに、現実の死が待っているとなればなおさらだ。恐慌に陥ったプレイヤーは、技を出すことも逃げることすらも忘れ、HPをあっけなく散らしてこの世界から永遠に退場することとなった。

22話 《生存者六千人》→←21話 《金属製の巨大な碑》



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みさっと - アドバイスです。 もう少し書くのに間を開けてわどうですか? 内容は、凄く好きです! (2018年4月8日 17時) (レス) id: 0bc1c5e779 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さきっち | 作成日時:2018年2月18日 1時

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