【SAO】桜の舞姫 -アインクラッド編- (ページ11)

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9話　『ナーヴギア』ページ11

貴方side

ざわ、ざわ、と集団のあちこちがさざめく。しかし叫んだり暴れたりする者はいない。僕を含めた全員が、まだ伝えられた言葉を理解できないか、あるいは理解を拒んでいる。
クラインの右手がのろりと持ち上がり、現実世界ではその場所にあるはずのヘッドギアを摑もうとした。同時に、乾いた笑いの混じる声が漏れた。リュウも僕たちを振り返り、から笑いを溢す。

クライン「はは……何言ってんだアイツ、おかしいんじゃねぇのか。んなことできるわけねぇ、ナーヴギアは……ただのゲーム機じゃねぇか」

リュウ「そうだ。脳を破壊するなんて……んな真似ができるわけねぇだろ」

クライン,リュウ「そうだろキリト!/シュン!」

後半は掠れた叫び声だった。シュンとキリトくんを食い入るように凝視するも、二人は同意の頷きを返せなかった。

ナーヴギアは、ヘルメット内部に埋め込まれた無数の信号素子から微弱な電場を発生させ、脳細胞そのものに疑似的感覚信号を与える。
まさに最先端のウルトラテクノロジーと言えるが、しかし原理的にはそれとまったく同じ家電製品が、もう四十年も昔から日本の家庭では使われているのだ。つまりーーー電子レンジ。

充分な出力さえあれば、ナーヴギアは、僕たちの脳細胞中の水分を高速振動させ、摩擦熱によって蒸し焼きにすることは可能だ。だけど。

キリト「………原理的には、有り得なくもないけど……でも、ハッタリに決まってる。だって、いきなりナーヴギアの電源コードを引っこ抜けば、とてもそんな高出力の電磁波は発生させられないはずだ」

シュン「大容量のバッテリでも内蔵されていない……限り…………」

そこまでを口にしたところでシュンたちが絶句した理由を、僕たちは察した。
サクラが泣きそうに顔を歪めながら僕の腕をきつく握りしめると、虚ろな表情で、長身の美丈夫は呻くように言った。

クライン「内臓……してるぜ。ギアの重さの3割はバッテリセルだって聞いた。でも……無茶苦茶だろそんなの!瞬間停電でもあったらどうすんだよ!!」

と、まるでクラインの叫び声が聞こえたかのように、上空から茅場のアナウンスが再開された。

〈より具体的には、10分間の外部電源切断、2時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試みーーー以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される、この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている〉