248話 飛び込みたくなる ページ8
「オレは、もうこの手を放さない…!!」
輝の声が辺りに響いた。
翔も目を見開いて我が弟を見る中、カイリは驚いたように目を見開いて巧に視線を移す。
巧と輝が見つめ合う中、周りにいたスタッフたちがなんだ、なんだと騒ぎ出した。
そんな中、Aの腕をつかんでいる爽歌はぎゅっと力をこめるが、彼女は反応をしないで、赤い顔で輝を見上げている。
ドキン、ドキンと脈打つ心臓が大きく音をたてた。
『…っ』
ーー鈴木輝…。
「どういうつもりだ。
Aの手を放せ」
「できません。
泣きそうな
輝の言葉に心臓がドクン、と脈打ちかあ…と顔を赤くしたAをカイリと爽歌が不安そうに見つめる。
二人の視線を感じながらもAは一瞬顔をしかめると、ドキン、ドキンとうるさい心臓を抑えるように拳をぎゅうぅ…と握る。
ーーだめ。
それ以上何も言わないで。
「オレだって、サキのことが…」
その言葉を言おうとした瞬間、
『やめてって言ってんでしょ!!』
輝の頭からゴッと痛々しい音が聞こえた。
Aが握りしめた拳を輝の頭に叩き落したのだ。
驚いたカイリと爽歌、巧、翔そして周りのスタッフたちはドン引きしてAから一歩離れた。
そんなことお構いなしに、Aはカイリと爽歌の手を引く。
『行こう。カイリ、爽歌、巧さん』
「え?え、ええ」
爽歌が慌てて返事をして、カイリも再度輝を見て翔を見ると、Aの後に続く。
巧はそんな三人に追いつき爽歌の横からAの顔をのぞきこむが、
「いいのか、A。彼は…」
恥ずかしそうに頬を赤らめているAに目を見開いた。
爽歌もカイリと顔を見合せ、驚いたように目を見開いて彼女を見つめた。
ーーごめんなさい。
───「オレはもう、この手を放さない」
ーー
───「オレだってオマエのことが───」
ーーだけど、あの言葉の続きを聞いてしまったら、きっと戻れなくなる。
何もかも捨てて、君の腕に飛び込みたくなる___…。
カイリが手を放し、Aの腕に抱き着く。
だが、彼女は震える手でスカートをギュ…と握りしめた。
そして体を震わせながら後ろにいる爽歌と巧を振り返る。
カイリも腕に抱き着きながらAを見上げた。
『カイリ、爽歌、巧さん。
心配かけてごめんなさい。
私のせいで、スタッフの皆さんにも迷惑かけちゃって、残りの撮影私、目一杯働きますから…!!』
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星花 Ruru(プロフ) - 一番最初から見てみたんですけどとても面白いです!!これからも頑張ってください!応援してます!!(っ*’ω`) (2017年3月29日 21時) (レス) id: 68eb365810 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきっち | 作成日時:2017年3月26日 23時