好きです鈴木くん!! ～もう一つの恋物語～ Six (ページ7)

今日:29 hit、昨日:6 hit、合計:53,123 hit

247話　視線ページ7

垂れ下がった腕を不思議そうに巧が見ていると、Aは悔しそうに唇をかんで自分を抱きしめているカイリと爽歌そして巧から顔をそらした。

そんな行動を知りもせずカイリはAから体を離すと、翔の隣で自分たちを見ていた輝に微笑みかける。

「あなたも…無事でよかった」

ほっと安堵の息をついたカイリの後ろから巧が歩み寄って輝に声をかける。

「Aを救ってくれたこと、心から礼を言う」

「………いえ…」

輝が寂しそうに目を細めながら返礼をすると、カイリが巧の様子を見て(冷たすぎじゃない…？)と心の中でつぶやく。
巧はそんなカイリのことなど知る故もなく、今だ爽歌に抱き着かれたままのAの手首を引っ張った。

「行こう、サキ。
ホテルに戻って少し体を休めないと」

「そうね、行きましょうA」

『あ…』

爽歌も巧に同意してAの両腕をひく。
カイリはそんな二人に苦笑いした後、名残惜し気に歩き出したAの横に並んだ。
両脇と前を三人に固められたAは(少し過保護すぎじゃない…？)と心の中で突っ込みながら歩みを進める。
どんどん輝との距離が遠くなるたびにズキン、ズキンと胸が痛んだ。

ーー鈴木輝の顔が見れない。
ごめんなさい。
今ふりむいたらきっと心が揺れてしまう。
これ以上、カイリたちを裏切れない。
今ならきっとまだ、この恋を諦められる。

ふりむかない＿＿…。

颯爽と歩き去るAの後ろ姿を見つめていた輝は、翔に肩を叩かれ巧とカイリ、爽歌に連れて行かれるAをもう一度見ると、悔しそうに顔をそらして、背を向けた。
翔も爽歌の後ろ姿を寂しそうに見つめると輝と一緒に歩き出す。
その瞬間、Aが振り返った気配がして、輝の足が止まった。
巧と爽歌に手や腕を引かれながらも振り返ったAは泣きそうに顔を歪めながら輝を見る。
その顔に輝と一緒に足を止めた翔が驚いたように目を見開くと同時に輝は駆け出して、Aの腕を引っ張った。
Aが目を見開くと振り返ったカイリと巧、爽歌も驚いたように目を見開く。｢｢｢……っ！？｣｣｣

「おい…何をする。
Aの手を放せ」

「…できません」

巧が急いで声をかけると、輝はきっぱりとそれを否定した。
目に涙をためながら輝を見上げるAの顔が驚きの色に変わった。
輝はAの手首をつかみながらまっすぐに巧を見つめる。

ーー君の瞳が、視線が、オレを好きだって叫んでる。

「放せない。
オレは、もうこの手を放さない…！！」