好きです鈴木くん!! ～もう一つの恋物語～ Six (ページ5)

今日:12 hit、昨日:6 hit、合計:53,106 hit

245話　過去も現在もページ5

『どんなに良くたって
信じ切れないね
そんな時だって
側にいるから
君という光が私を見つける
真夜中に

もっと話そうよ
目前の明日のことも
テレビ消して
私のことだけを見ていてよ』

歌い終わったAの頭の中にカイリの顔が浮かび上がった。

(あの子はこの歌が一番好きだって言ってたな……)

───「私、Aの歌、どれも好きだけどこの歌が一番好きだなぁ……！」

嬉しそうに笑うカイリのことを思い出してAも微笑むと、輝はそんな彼女をじっと見て、ふいに「そーいえばさ」と口を開いた。

「オレまだ謝ってなかったよな。
さっきのケンカ、売り言葉に買い言葉でオマエに「可愛くない」って言ったこと」

『な、何よ急に……。
いいよ、別に。本当のことだし…』

「よくねぇ！
……本当はすげー可愛いじゃん」

小さい声でそう言った輝にAの目が見開かれた。

───『どうせ私なんか可愛くないわよ』

『Aさんの足元にも及ばない』

ーー「サキ」をずっと傷つけていたこと。
オレは気づいてなかった。
あの時、やっと気づいたんだ。
「可愛くない」と泣いた君の姿がとても可愛くて。
ずっとオレはサキの中に「A」の面影を追い続けてきた。
でも、それだけじゃない。

いつの間にか現在(いま)の君にも同じくらい惹かれていたんだ。
意地っ張りで素直じゃなくて、さみしがりやのくせに甘えるのが下手な女の子。
強くて弱い、不器用な君に。

「素直でよく笑う「A」と同じくらい、意地っ張りで泣き虫なオマエもオレは可愛いと思う…」

ーー過去も現在(いま)も、全部が愛しい。

赤い顔で言った輝を同じく赤い顔で見つめていたAが『す…』と名前を呼ぼうとすると、彼は「へっくしょん」と大きなくしゃみをした。
なんとも雰囲気を台無しにする男だ。
ムードクラッシャー輝とでもいうのだろうか。

ぶるぶると体を震わせながらずず…と鼻水をすする。

「わり。ちょっと冷えてきたみたい」

うーと唸りながら体を擦っている輝をAは呆然と見ると意を決したように唇をぎゅっと噛み締めて輝の背中にぴとっとひっついた。

「え…？」

びっくりした輝が振り返ろうとすると、

『こっち見ないで！！』

「ハ…ハイ！！」

Aに一喝されてビクッと肩を跳ねあがらせながら前に向き直る。
Aは輝の首に腕を回すとぎゅっと抱きしめながら『さ、寒くない…？』と照れくさそうに口を開いた。
思わず輝が目を見開いて顔を赤くする。