好きです鈴木くん!! ～もう一つの恋物語～ Six (ページ37)

今日:35 hit、昨日:6 hit、合計:53,129 hit

269話　大人気女優様々ページ37

ーー別れては出会い、

鼠色の膝上ワンピースにチェック柄のシャツを腰巻にしたAは指輪を見つめながら階段を下りていく。
その時、赤色のカチューシャをつけている赤混じりの黒髪が風に揺れた。
そんなAに高木が車のそばで声をかける。

「お疲れさま、サキ。
撮影、長びいて疲れたでしょ。
車で送ってくわ」

『ありがとう、高木さん』

その時、ガクンとAが階段を踏み外した。
小さく『キャ…』と悲鳴を上げる。

ーー出会っては別れ。

まためぐり逢う。

落ちてくるAをキャッチしたのは急いで走ってきた輝だった。
思わず赤い顔で目を見開いたAはお姫様だっこのまま、あわあわと口を開く。

『ひか……じゃなくて、鈴木輝！？
なんでここに…』

「巧さんから話、聞いた」

目を見開く。

「なんでだよ。
なんでカイリとずっと一緒にいるなんて、あんなウソついたんだ…！！」

自分をまっすぐ見つめる目に、ドクン…とAの胸が嫌な音をたてた。
ドキン、ドキンと早鐘をうち、嫌な汗が背中を流れる。

ーーウソ。
なんでバレてるの…？

『…っき…君のことが嫌いだからよ！
き、君しつこいしずっと一緒にいるってウソついてでも私の前から消えてほしかったからよッ』

(えーーー！？)

ガーンとショックを受けた輝を見てぎゅっと目を閉じる。

(ごめんなさい、ごめんなさい。
でも、輝に嫌われないと私…！！)

目を開けたAはフッと鼻で軽く笑い、髪の毛を手の甲で少し持ち上げる。

『わ、私は今、将来を期待されてる人気女優なのよ。
君みたいな一般人と噂になったら評判もガタおちじゃない。
私と君じゃ全然つりあわないわ！！』

Aは(ごめんごめん～～)と内心泣きながらショックを受けたように床に両手をつく輝を見る。

『つきあうならもっと知名度が高い人とつきあいたいの。
君みたいな凡人じゃなくて！！』

グッサーと重たいものが輝の胸に刺さった。
泣きながら体を震わせている輝はもう心が折れそうである。
だが、そんな輝の頭に巧の言葉が浮かんだ。

───「あの子たちは女優だぞ」

ギュ…と唇を噛み締める。

ーーそうだ。
Aのセリフに惑わされるな。

「…わかった」

視線をそらしていたAはその言葉で輝に視線を向ける。
輝はまっすぐにAを見つめた。

「オマエは今をときめく“大人気女優様々”で有名人だから、一般人(バンビー)で凡人なオレとはつりあわないし、つきあいたくない。そーいうこったな？」