好きです鈴木くん!! ～もう一つの恋物語～ Six (ページ35)

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267話　想いの強さページ35

ーー本当に、不器用なコたちだ。

「……腹立たしいほどよく似ているな、君たちは。
1つ、君たちにとっていいことを教えてやろう」

ずっと黙っていた巧が口を開いたので双子は涙を拭いてきょとんとした顔を向けた。

「オレは彼女と婚約などしていない。
それどころか、つい最近別れを告げられたばかりだし、カイリとも一緒にはいない」

ーー巧さんと星野が別れた…？

ーーカイリと一緒にいないって…？

「え…そんな」

「オレたちが言われたことと逆…」

疑問が双子の頭の中を駆け巡る。
輝が口を開くとそれを遮るように巧も腕を組んで強く言い放った。

「あの子たちは女優だぞ。
演技で君たちを欺くくらい朝飯前だ」

目を見開いた双子は考えるように巧から視線を外した。

ーーなんで…？
なんで星野とAはオレたちにウソをついたんだ…？

そんな双子をじっと見つめた巧はス…と顔を背けながら二枚の紙を差し出した。

「青山と渋谷にあるスタジオの地図だ。
サヤカは8時ごろまでそこでCMの打ち合わせ、サキはCMの撮影をしているはずだ。
直接会って話を聞けばいいだろう」

目を見開いた双子はとりあえず差し出された紙を受け取った。

「「…巧さん…？
どうして…」」

疑問を口にすると巧は静かに昔のことを語り出した。

「オレの父はいくつもの会社を経営してるグループの会長でね。
オレは幼い頃から跡を継ぐべく厳しい教育を受けてきた。
上に立つべき人間としての考えを植えつけられてきたんだ」

その真実に目を見開いた。

「撮影中にサキが崖から落ちた時、君は迷わず海に飛び込んだな」

じっと輝を見つめた巧は静かに視線をそらした。

「とてもじゃないがオレにはあんな無謀な真似はできない」

「「！」」

「命が惜しいわけじゃない。
次期社長としてオレには背負うものが沢山ある。
会社の未来、社員の生活、それを守るものが上に立つ者としての義務だ」

巧の頭の中に、Aが崖から落ちたと聞いてすぐ自分の横を駆け抜けていった輝が浮かんでいた。

「オレは2人だけを選べない。
2人のためだけに命を懸けられない。
あの時それに気づいたんだ」

巧は視線を戻すと、じっと輝を見つめた。

「君は違う。
命にかえても1番にサキを守る。
一瞬も迷わない、ためらわない」

目を見開く輝の隣にいる翔にも視線を移した。

「オレはすでに想いの強さで君たちに負けていたんだ」

巧はそれだけ言うと踵を返す。