好きです鈴木くん!! ～もう一つの恋物語～ Six (ページ32)

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264話　お守りページ32

ーーそしてその夢を誰より喜んで応援してくれたのは輝。

「いっしょにがんばろうぜ。
将来Aは大女優。
オレは大物バスケット選手」

『うん…』

輝。
もうそばにはいられないけれど、あなたが背中を押してくれたこの夢だけは絶対に捨てないよ。
この未来(さき)もずっとあなたと繋がっていたいから。

スタジオにて、ドレスを着て髪の毛をセットしてもらったAはスタッフが呼びに来るまで楽屋で待機していた。
すると、ガチャとドアが開いてスタッフが入ってくる。

「「サキ」さん。
CMの撮影始まります。
スタジオに移動お願いします」

『はい』

頷いて立ったAは首元から下げている星の飾りのついた指輪を持ち上げた。
手のひらにのせ、じっと見つめる。

『輝…』

頭に甦ってくるのは、この前話した叔父と叔母との会話。

「サキ。
これをあなたに返すわ」

そう言って渡されたのは携帯電話と指輪だった。
見覚えのあるそれは昔、自分が使っていた携帯と輝からもらった指輪だ。

『叔母さん、叔父さん。
これ…』

「2年前の事故の時、あなたが身につけていた指輪と携帯電話よ。
ごめんなさいね。
事故のことを思い出させたくなくて私たちがそっと隠しておいたの」

涙ぐむ叔母たちをAは見てから視線を落として自虐的に微笑んだ。

『私のほうこそごめんなさい。
私のために嘘をつかせて心苦しい思いをさせて…』

「A…」

楽屋を出る前にAはチェーンを首に回すと、カチとはめた。
首からさがる指輪を大事そうに持ち上げる。

『無事に私のもとに帰ってきてくれてありがとう』

───「左手にはめとけ！！」

「オレらが大きくなって迎えに行くまで！！」

ーー約束は果たせなかったけれど、

『一生、お守りにさせてね』

Aは指輪を握りしめて愛おしそうに笑った。

ーーもう直接伝えることはできないけれど、

AのCMを撮っていたスタッフたちが頬を染めながらざわついた。

「なんだかサキ…。
雰囲気変わったみたい」

くるくると回るAの周りを白い羽が舞う。

ーー画面の向こうのあなたへ。
いつだって呼びかける。

「演技が優しくなったっていうか、まるで大切な人に何かを語りかけてるみたいな…」

羽と一緒に寂しげな瞳をカメラに向けるAにスタッフたちは思わず見惚れた。

「恋しさや切なさがあふれて、いっしょに泣きたくなるかんじ…」

＿＿『あなただけを愛してる』