好きです鈴木くん!! ～もう一つの恋物語～ Six (ページ4)

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244話　暢気ページ4

「こんなんでも今は貴重な食料だ。
うまく感じるだろ。
ほら、もう1個」

それを受け取って口の中に入れるとAは目を輝かせながらこくこくと頷いた。
そんなAに輝は微笑むと、口を開く。

「万が一、救助が遅れても大丈夫。
いざとなったらオレが海にもぐって魚でもワカメでもとってきてやるよ。
さっきの雨で岩場に水たまってるし数日はなんとかなる。
海鮮のフルコース、食わせてやる。
だからあんまし不安そうな顔すんな」

そう言って輝はわしゃわしゃとAの頭をなでる。
思わず『な！』と声を出したAだが、おとなしく輝に頭を撫でられていた。

ーーあ、そっか。

(私が情緒不安定になってると思ってたんだ)

『……』

ーー私のせいで自分まで危険な目に遭ってるのに、鈴木輝(きみ)は一言も責めないのね。

横目で輝を見つめていると輝は急に目を閉じて何かを歌い始めた。

「雨あがり雨あがり♪
あー♪あー♪
カエルカエル♪
かたつむり♪」

その歌を聞いたAは顔をひきつらせながら尋ねた。

『何？それ』

「オレが小学校の時に翔と作った歌。
いい曲だろ？」

『……』

「いっしょに歌えよ。
きっと元気出るから！！」

その言葉にAは目を見開いた。

『君ってこんな時でも明るいのね』

「そっか？
そーだな。深刻に考えたり、頭使うの苦手なだけ」

無邪気に笑った輝にAの胸がきゅん…となった。
心臓の音が早くなる。

ーーああ、これ以上はいけないってわかってるのに。
好き…。

立てた膝に顔を埋めてチラリと見上げたAの顔に輝は頬を染めた。
頬を染めたまま輝がAを見つめていると彼女はふいに歌を口ずさんだ。

『どんな時だって
たった一人で
運命忘れて
生きてきたのに
突然の光の中、目が覚める
真夜中に

静かに出口に立って
暗闇に光を撃て

今時約束なんて不安にさせるだけかな
願いを口にしたいだけさ
家族にも紹介するよ
きっとうまくいくよ

どんな時だって
ずっと二人で
どんな時だって
側にいるから
君という光が私を見つける
真夜中に

うるさい通りに入って
運命の仮面をとれ

先読みのし過ぎなんて意味の無いことは止めて
今日はおいしい物でも食べようよ
未来はずっと先だよ
僕にも分からない

完成させないで
もっと良くして
ワンシーンずつ撮って
いけばいいから
君という光が私のシナリオ
映し出す

もっと話そうよ
目前の明日のことも
テレビ消して
私のことだけを見ていてよ』