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260話 悲しいキス ページ28

ーー私のために本当のことを黙ったまま、いつも明るく笑っていてくれてたなんて。

ごめんなさい。
ごめんなさい。

ありがとう。





『もう夜かぁ……。
あっという間ね!!』


笑顔で背伸びをしたAは海の見える港まで歩いて輝を振り返った。
風がAの髪を揺らす。


『こんなに思いきり遊んだの芸能界に入ってから初めて!!
楽しかったわ、ありがとう!!』


歩いていくAの後ろ姿をじっと見つめてた輝は、意を決したように口を開いた。


「なあ木之本。
オマエ本当は何かあったんじゃないのか?」


立ち止まって目を見開く。
輝はそんなAから視線を斜め下に落として気まずそうに言葉を続けた。


「違ったらごめん。
なんか今日のオマエ、いつもと違うように見えてさ。
笑ってるのに寂しそうっていうか…」


ぎゅっと唇をかみしめる。


「…って何、言ってんだろうなオレ。
変なこと言ってごめん」


頭をかきながら謝る輝に対してAは拳をぎゅっと力いっぱい握りしめた。
ドキン、ドキンと心臓が早鐘をうつ。

ーーああ、もう。
どうしてあなたは。


『…本当に、輝にはかなわないなあ……』

「え…?」


ボソ…と言った言葉は輝には届かなくて、不思議そうに首をかしげていた。
Aが思い出すのは小さい頃から一緒にいてくれた輝の笑顔。

ーー昔からそう。
鈍感そうに見えるのに、他人(ひと)の気持ちの大事な部分は見逃さない。
いつも私の傷みに気づいてくれる。
素直で真っすぐな優しさ。

ス…と輝の胸元に手を伸ばす。

ーーそんなところがとてもとても好きだった。

悲しそうに自分を見上げるAに輝の胸がドキ…と音を立てた。


「木之本…?」


輝が呼ぶがAの頭によみがえるのは小さい頃、自分が演技をしていたところを見つけくれたこと、アリスのとき大丈夫と抱きしめてくれたこと、いつも自信満々に笑っていたこと。
今までの出来事は一生忘れられない。

ーー忘れない。
小さい頃、初めて出会った時からあなたがくれた優しさや温もり。
かけがえのない大切な思い出。
全部全部一生忘れない。

Aはス…と輝に顔を近づけると、自分から唇を押し当てた。
唖然と輝が目を見開く。

ーーずっとずっと愛してる。

唇を離すと輝は目を見開いて赤い顔で自分の唇を押さえる。


「…っ木之…本…?」


悲しそうに輝を見上げたAは俯いてぎゅっと唇を噛み締めると、輝の胸に置いたままの手をぎゅっと握りしめた。

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星花 Ruru(プロフ) - 一番最初から見てみたんですけどとても面白いです!!これからも頑張ってください!応援してます!!(っ*’ω`) (2017年3月29日 21時) (レス) id: 68eb365810 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さきっち | 作成日時:2017年3月26日 23時

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