好きです鈴木くん!! ～もう一つの恋物語～ Six (ページ16)

今日:7 hit、昨日:6 hit、合計:53,101 hit

256話　一生彼だけをページ16

力強い眼差しで自分たちを見つめる二人に、巧とカイリの背中にゾク…と冷たいものが走った。

ーーこの娘たちは、本当に爽歌とAなの/か…？
こんなにも強い激しい瞳をする少女たちが。

「…人気女優の立場を捨てでも、彼の元に戻るというのか」

巧の質問にAとカイリは顔を俯かせて「『……いいえ』」と答えた。

「鈴木くんの元には戻りません」

『爽歌と2人で生きていきます』

その言葉に巧とカイリはがく然と目を見開いた。
爽歌の脳裏には巧と愛し合った時のこと、そしてAの脳裏にはカイリの笑顔が過ぎ去った。

ーー記憶がなかったからといって、輝とちひろを裏切った事実は変わらない。

Aがギュッと拳を握りしめて声を絞り出した。

『たくさん彼らを傷つけました。
ひどいこともたくさん言いました』

なんの恐れもなく純粋だったあの頃には戻れない。

中学の頃みたいに楽しく笑い合うことはできない。

「もし鈴木くんたちが許してくれたとしても、私たち自身が私たちを許せません」

少し目を伏せながら言った言葉にカイリと巧は目を見開いた。
悔しそうに拳を握りしめるAをカイリは辛そうに見つめる。

『2人で歩いていきます。
記憶が戻ったことも言いません』

顔を上げて巧とカイリを見つめる二人の目には涙がにじんでいた。
だが、その顔には覚悟の笑みが浮かんでいて巧とカイリは驚いたように目を見開く。

『「そして、ずっと一生彼だけを想って生きていきます」』

ーーほかの恋なんていらない。
一生にたった1度の恋でいい。

好きだよ、輝。
もう2度とあなたの元に還れなくても。