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255話 絶対に彼しか愛せない ページ15

「…いえ。
黙っていたのは巧さんやカイリちゃん、成瀬の叔父さんたちに木之本の叔父さんたちの愛情だったと知っています」

『記憶のない私たちを労って優しく接してくれた。
そのことに感謝こそすれ、恨むことは絶対にありません』

「……でも…」


爽歌はAの手を握りしめ、意を決して巧を見つめて、頭を下げた。


「申し訳ありません。
私はもう、巧さんとおつきあいはできません」


Aは握られた手に力を込め、目線を横にずらした。
カイリは爽歌と巧を交互に見て成り行きを見守っている。
爽歌は頭を下げたまま、言葉を続ける。


「お別れする以上、事務所をやめさせていただくつもりです。
今まで私がお仕事をいただけていたのは、巧さんや社長のご厚意によるものだったと思っています。
もう甘えるわけにはいきません。
また一から出直すつもりでがんばります」


そう言葉を続けた爽歌にAが驚いて目を見開くと、巧はダンッと爽歌を壁に押し付けた。
必然的に手をつないでいるAもひっぱられ、冷たい巧の眼差しに体を震わせる。


「オレが、そう簡単に君と別れると思うのか…?」


爽歌が目を見開いて、唇をかむと、Aが爽歌の前に出て巧から庇うように片手を広げた。
それに驚いた巧や爽歌、カイリが彼女を見つめる中、Aは静かに話し出した。


『私も爽歌と同じく一から出直します。
たくさんのご恩を受けていながら本当に勝手だとわかってます。
巧さんは爽歌にとっても私にとってもずっと尊敬できる憧れの人でした』


巧が目を見開くと、爽歌もAの後ろから一生懸命声を出した。
強く握られたAの手が少し痛い。


「優しくしてもらえてうれしかった。
このおだやかな気持ちが恋なんだとそう思っていました。
きっと、そういう形の恋もあるんでしょう。
でも、思い出したんです」


ーー好きで好きでたまらなくて、胸がいっぱいになって、


『私たちの知ってる恋は、穏やかで静かなものじゃない。
苦しいほど強く焦がれるものでした…!!』


胸に手を当て、強く言い放ったAと真っすぐに自分を見つめる爽歌の姿に巧とカイリは思わず言葉を失った。
カイリがぎゅっと右手を握りしめたのが視界の端に見えたAは一瞬カイリに視線をやるが、すぐにそらした。

ーー記憶を失っても、もう一度彼を好きになった。


「きっと何度生まれ変わっても、私たちは鈴木くんたちに恋をします」

『「絶対に彼しか愛せない」』

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星花 Ruru(プロフ) - 一番最初から見てみたんですけどとても面白いです!!これからも頑張ってください!応援してます!!(っ*’ω`) (2017年3月29日 21時) (レス) id: 68eb365810 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さきっち | 作成日時:2017年3月26日 23時

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