好きです鈴木くん!! ～もう一つの恋物語～ Six (ページ13)

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253話　聞こえた声ページ13

「「「……」」」

三人が口を閉じてAを見つめる。
それに眉をひそめたAを見てカイリが意を決して口を開いた。

「A。落ち着いてよく聞いてね」

カイリの顔を見て、Aの頭に嫌な予感が通った。
嫌な汗が背中を流れる。

「あなたのご両親は、2年前の交通事故で亡くなったよ。
爽歌のご両親と一緒に」

光の宿ってない目が見開かれた。

『嘘…そんな……っ』

頭に浮かぶのは楽しそうに笑い合う、春輝や桜花、直道に万里子の顔で。
それと同時にタクシーが事故に遭ったときのことも鮮明に思い出された。

ーー違う。
本当は私、わかってた。
だから思い出したくなかった。

本当は＿＿＿…。

床に崩れ落ちたAに高木とカイリが寄り添う。
涙がポロポロと出てきて、溢れて止まらない。
Aは顔を手で覆いながら涙を流した。

『あ、ああ…っ。
あぁあ…っ』

ーーお父さん、お母さん。
苦しい。
うまく呼吸(いき)ができない。

助けて＿＿＿…。

「木之本！！」

突然響いた声にAは目を見開いた。

『今の声…？』

カイリも驚いて目を見開きながらドアを振り返った。

「成瀬！！」

「木之本どこだ！？」

翔と輝が制服を着たまま病院に駆け付けたのだ。
大声で名前を呼ぶ双子に看護婦が急いで駆け寄る。

「ちょ…っ。
なんですかあなたたち、こんな遅くに。
面会時間は終わってますよ」

そう言われても引き下がるわけがないのがこの双子だ。
翔は荒い息をつきながら駆け寄ってきた看護婦に「すみません」と全く反省なしに謝った。

「女優のサヤカとサキが倒れてここの病院に運ばれたって調べて…」

「ファンのかたですか！？
困ります」

「ホラ、帰って！！」

看護婦が四人がかりで双子を押し戻す。
輝はそんな看護婦たちに慌てながらも「いや、そーじゃなくて…」と言い返す。

「と、とにかく会わせてください」

その声が聞こえていたAは、下を向きながら小さく『…ひかる』とつぶやいた。

『輝が呼んでる…』

「「え…？」」

小さい声でそう言ったAにカイリと高木が首をかしげると、彼女はだっと病室のドアに向かって走り出した。
その後ろ姿に高木が「サキ！？」と声をかける。
カイリは黙ってAを見送った。

その頃、双子も看護婦たちの間をすり抜け、爽歌とAの病室に駆け出していた。

「待ちなさい、あなたたち！！」

「勝手に……」

看護婦の声が響くがそんなのお構いなしに双子は走る速度を上げる。