好きです鈴木くん!! ～もう一つの恋物語～ Six (ページ11)

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251話　思い起こされた記憶ページ11

爽歌は森川、Aはカイリに縋りつくように服をぎゅっとつかんだ。

「『男の子…。
男の子がいたわ。
背の小さな…』」

「サヤカ…？」

「A…？
(まさか……)」

二人は森川とカイリの服をつかみながら頭の中に流れる映像を口に出していく。

「『赤い髪の……』」

「そう、屋上で…」
『そう、小さい頃に…』

「『1人で演技してたのをみつけてくれた…』」

＿＿『「───ねえ」』

カイリと森川の服を放した二人は、額を押さえ、呆然と遠くを見つめる。
頭に浮かぶのは、屋上で翔と出会ったときと、小さいときから一緒にいた輝のこと。

『「〈ねえ、ヒロト。
聞いてくれる…？〉」』

───「A！
オマエ、すげーな！！」

───「今、オマエが演じてたのアレだろ！！
昨日やってたドラマ」

『「〈何度生まれ変わっても私。
もう一度あなたに恋をする…〉」』

ガクガクと体が震えた。

───「オレすげー感動した！！」

───「A！オマエ、天才だよ！！」

笑顔の翔と輝が頭に浮かんだ。
爽歌とAの目に涙が浮かんで、頬を伝って流れていく。

『「〈あなたが「好き」───…〉」』

───「オレは鈴木翔！！
翔るって書いて「かける」な！！」

───「ひ・か・る！
ひかるくんじゃなくてひ・か・る！！
ほら。呼んでみろよ、Aッ！」

───「あーーっ。
オマエ同じクラスだったんだな、星野さわやか！！」

「あの、さわやかじゃなくてさやか…」

「そーだった！」

───「よかったな、A！
オレたち同じクラスだぜ！！」

『そーだね、一緒でよかったね！』

「そーだな！」

───「「よろしくな、星野爽歌！！/黒瀬A！！」」

中学の頃の輝と翔の顔を思い出した二人は、はじけたように顔をあげた。
そして二人の体がグラついたかと思うと、二人はその場に倒れた。

「サヤカ！？」

「大丈夫、二人とも！！」

「誰か救急車を呼んで！！
早く！！」

「イヤ、A！爽歌！
イヤァァァ！！」

倒れ込んだ二人の手は硬く繋がっていて、頬には涙が伝っていた。
カイリがAの体にすがりつく中、周りのスタッフたちは忙しなく動き回る。

ーー「星野爽歌」
「黒瀬A」

「鈴木くん…」
『輝…』

それが、私たちの本当の名前。