7話 痛む胸 ページ9
「へー、この本あんたのだろ。
あんた演劇やってんの？」
「お、これ知ってる。
昨日母さんが見てたドラマといっしょだ」
「へー、小説版なんて出てんのか」
二人で感心ながら見ていると急に本を取り上げられた。
顔を上げると爽歌が切羽詰まったような顔でこちらを見ていた。
そして、顔を赤くしてダッと逃げ出す。
「「…？」」
((オレたちなんか変なこと言ったか…？))
頭の後ろをかきながらそんなことを考えている双子にちひろとAは「行くよー」と声をかけ、四人はそこを離れていった。
「ったく、三人ともどこに行ったのかしら。
いっしょに帰ろうと思ったのに」
翔は友達と出かけていき、輝とAは校内を見てくると別れてからしばらくは教室で、三人が戻ってくるのを待っていたちひろだが、いつまで待っても来る様子のない三人に、ついに教室を出て、翔と輝そしてAを探しに出ていた。
キョロキョロと辺りを見渡しながら廊下を進んでいると、ふと窓の外に映っている景色に視線を奪われる。
「あれ」
そして、自然と顔に笑顔が浮かんだ。
「あそこにいるの、かけ───……」
しかしすぐにその笑顔は消えてしまった。
ちひろの視線の先には、彼女の幼馴染みの一人であり、好きな人でもある鈴木翔がいた。
その翔は知らない女子生徒と屋上の一番上で、楽しそうに笑いあっていたのだ。
ちくちく、胸が小さく痛んだ。
「…ったく。
ムカつくなさっきの３人。
オレ様を殴りやがって。
どーやって仕返ししてやろうか…」
不機嫌丸出しで廊下を歩く男子生徒が一人いた。
彼が、先ほど翔とケンカをし、ちひろとAによって自分の意思とは正反対に、無理やり周囲の人たちに頭を下げさせられた鈴木忍である。
殴られ、恥をかかせられ、高いプライドをこれでもかというほどに崩された忍は、いつまで経っても三人に対するいら立ちが消えずにいた。
ひとつ舌打ちをしたその時。
前方に見覚えのある女子生徒を見つける。
(さっきの女…っ)
その女子生徒は、窓から見せる外の景色に意識を向けているため、忍の存在には気が付いていない。
しかし、忍は苛立つ気持ちをそのままに、彼女に声をかけた。
「おい、オマエ───……」
どんな罵声をかけてやろうか。
どんな恥をかかせてやろうか。
そんなことを考えていたのに、忍の言葉は途中で途切れてぱっと素早く彼女に見つからないように近くに隠れ、激しく脈打つ心臓に手を当てる。
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琴音 - めちゃくちゃ、キュンキュンしました！ありがとうございました🙇 (2022年4月12日 23時) (
レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 私も鈴木君！好きなので嬉しいいです！！ (2020年4月15日 3時) (レス) id: 623759395b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さきっち
| 作成日時：2016年11月23日 18時
