43話 見惚れるほどの演技 ページ46
ギャラリーに振り向いたときの、Aの微笑みに一瞬で体育館内が静かになった。
ーーAへの野次や冷やかしが一瞬で止んだ。
ああ、もう「A」じゃない。
「ジュリエット」だ。
『〈ロミオ。ほかの殿方のもとへ嫁げと、本気でおっしゃっているのですか〉』
「〈彼のほうがあなたを幸せにできる。
あなたも本当はそうお思いなのではないですか。
ジュリエッ…〉」
つかつかと近づいて来るAに佐藤の言葉が止まる。
すると、
ビターーン
(え)
Aに頬を叩かれた佐藤はもちろん、ギャラリーのみんなも痛そうに顔をゆがめる。
叩かれた頬をおさえる佐藤に、Aは言葉を続けた。
『〈あんまりだわ。ロミオ〉』
Aは後ろを向くと、震える両手をぎゅっと抱きしめ、涙を流す。
『〈私の気持ちを…お疑いですか…？〉』
ーー同じ役。
同じセリフなのに、今までの演技とちがう…！？
激しさだけでなく、気丈さ、いじらしさ、
薫りたつような女らしさ＿＿＿…
そんなAの姿にクラ…と目眩がした佐藤は、彼女を強く抱きしめる。
「〈ジュリエット…〉」
ーー体が自然に動く。
優しく抱きしめてやりたい。
心から愛おしい＿＿＿…
『〈あ…〉』
涙を流すAの顎をつかみ、顔を上げさせると、二人はそっとキスを交わした。
そんな二人に思わず頬を染めて見ていたギャラリーがどよめく。
見ていた翔と爽歌も思わず、頬を染めた。
「すげー」
「あれ、本当にキスしてないー？」
「キャーーッ」
女子の悲鳴と男子の歓声が上がる中、二人の唇は離れないまま。
「でも、映画みたいに綺麗でみとれちゃう…」
そんな二人に輝は奥歯をかみしめ、手を握る。
ーー目えそらすなよ、オレ。
Aを好きでいる限り、この痛みに耐えなきゃいけねーんだ。
約束したんだ、アイツの全部を受け止めるって。
凛とした眼差しで二人を見つめる輝に、翔と爽歌は顔を見合せて微笑みあった。
『〈ロミオ、私はこの恋に命をかける覚悟ができています〉』
佐藤の手を握るAに輝の脳裏にさっきの出来事がよみがえった。
ーーあ…。
『〈好きな人は、あなただけ…！！〉』
ギャラリーのみんなは頬を染めたままじっと静かに二人を見つめていた。
───『いつも相手役を輝だと思って演じてた』
抱きしめ合う二人。
そのときのAの表情はとても優しくて、思わず輝は口許に手を当て、赤くなった顔で彼女を見つめた。
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琴音 - めちゃくちゃ、キュンキュンしました！ありがとうございました🙇 (2022年4月12日 23時) (
レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 私も鈴木君！好きなので嬉しいいです！！ (2020年4月15日 3時) (レス) id: 623759395b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さきっち
| 作成日時：2016年11月23日 18時
