33話 昔話 ページ36
ちひろはそんな忍を見ると、視線をずらして昔のことを話し始めた。
「……話変わるんだけど。
輝ね、2年前まで野球少年だったんだよ。
翔は昔からバスケしてたんだけど…」
そこまで言って忍に背を向ける。
ちひろの頭の中にはいつだってそばにいてくれたAの顔が浮かんでいた。
「バスケやってたのは私とAのほう。
ミニバスケで全国優勝したりして、けっこう有望視されてたの。
よく「将来Aといっしょにプロの選手になる！！」って、翔と輝に夢、語っててさ。
でも、試合中に私が大ケガしてね」
ちひろはその時のことを思い出すように肩に触れる。
「肩、故障しちゃって、バスケは断念。
Aも試合中にいっしょにいたのに、守れなかったって自分を責めてさ。
悔しくて、悲しくて、バスケのボールも見たくなくなっちゃった」
ーーその時、翔と輝が＿＿＿＿。
「泣くな。A！！ちひろ！！」
「「オレたちがかわりにオマエたちの夢を叶えてやる！！」」
「オレにバスケ教えてくれ」
「オレたちがオマエたちの腕になる！！」
そうしたら、Aも＿＿＿。
「わたし、絶対にちひろを守るッ！これからちひろが傷つかないように、わたしが守るからッ！」＿＿＿…
「輝がバスケを始めたのはAと私のためなの。そんなふうにひとのために一生懸命になれちゃうヤツらなんだ」
ちひろは忍から離れて空を見上げる。
「バカだし、単純だけど、そんな優しいバカが私は大好き。
翔たちが嬉しそうだと私も嬉しい。
元気がないと私も哀しい」
ーー少し胸は痛むけど、
「だから、応援するの。
翔たちのことが大好きだから、翔の恋も、輝の恋も、Aの恋も。
みんな私が応援するの」
ーー大好きだから＿＿＿…。
そう言って振り向いたちひろの笑顔は悲し気だけどどこか愛おしさをふくんでいるような綺麗な顔で、忍の鼓動は一気に早まった。
「次！ダッシュ10本！！」
「「「ういッス！！」」」
「翔、がんばって！！」
『輝も頑張れ！！』
「「おーー！！まかせとけ！！」」
両腕を上げて返事を返す双子にAが笑い、ちひろが少し悲しそうに笑うと、そんな彼女を後ろから見ていた忍が口を開く。
「……おい、伊藤」
忍に呼ばれたちひろは振り返る。
忍の声に部員のみんなが振り返り、ちひろは隣にいたAの手を握った。
忍はそんなちひろを見てAをチラリと見るが、すぐに視線をそらす。
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琴音 - めちゃくちゃ、キュンキュンしました！ありがとうございました🙇 (2022年4月12日 23時) (
レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 私も鈴木君！好きなので嬉しいいです！！ (2020年4月15日 3時) (レス) id: 623759395b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さきっち
| 作成日時：2016年11月23日 18時
