16話 台詞覚え ページ18
呆然と立ち尽くす爽歌にちひろとAはニコッと笑いかけた。
「あーあ、せっかくAと二人で、内緒で劇の練習してたのに、見つかっちゃって恥ずかしいな」
『ちょうど、翔の制服脱ぎ捨ててあったから、ちょっと借りてたんだ』
笑いながら言う二人に爽歌は自分の勘違いだとわかり、顔を赤くした。
(なんだ、劇の練習だったのか)
ーーやだ私。
一瞬ちひろちゃんも鈴木くんのこと好きなのかと誤解しちゃった……。
顔を赤く染める爽歌にちひろは一瞬視線を床に落として、Aと爽歌に頼み込むように手を合わせた。
「ねえ星野さん、よかったらちょっと練習つき合ってくれる？相手がいないとどうもコツつかみにくくって」
「え…でも、私なんて……」
「おねがい！
10分だけでいーからさ♡
Aも手本見せてよ！」
『しゃーないな』
輝の机から立ち上がり、ちひろと爽歌に近づいた。
八王子が教室前の廊下を歩いていると自分の教室からちひろの驚いた声が聞こえて、歩みを止めた。
「え！？もしかしてAと星野さん、登場人物のセリフ全部覚えてるの！？」
「あ、うん。
八王子先生の書いた脚本、すごくユニークで面白いから何度か読んでたら頭の中に入っちゃって……。Aちゃんは？」
『ん？』
Aは椅子に座り頭の後ろで腕を組んだ状態からちひろと爽歌に視線を移して、組んでいた腕をほどく。
『私はちひろの練習に何度か付き合ってたら自然と覚えちゃった。
まあ、準主人公だしねー』
「うそ…私なんて自分のセリフもまだ覚えてないのに…」
Aなら昔から演劇とか好きでよくセリフを覚えてはちひろたちに披露していたのでわかる。が、爽歌まで覚えているとは思ってなくて、ちひろは驚きに目を見開きながらAを見る。
「ね、A。
じゃあ、7ページめの森の妖精たちのセリフとかも覚えてる？」
『ん？あ、うん』
Aは立ち上がり胸に手を当てながらちひろと爽歌を見つめた。
『〈初めましてお嬢さん。
キミは人間だね？
ここは不思議の国、人間がここへ足を踏み入れたのは50年ぶりだよ〉』
Aの演技に立ち上がっていたちひろと爽歌は興奮したように拍手をした。
ちひろは次に爽歌の方へ向き、台本を片手にページを指名する。
「Aちゃん、すごいです！」
「Aは相変わらず、すごーい！
じゃあ星野さんは、ラストシーンの女王のセリフ、お願いしてもいい？」
「え…うん」
三人は楽しく演劇の練習をしていた。
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琴音 - めちゃくちゃ、キュンキュンしました！ありがとうございました🙇 (2022年4月12日 23時) (
レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 私も鈴木君！好きなので嬉しいいです！！ (2020年4月15日 3時) (レス) id: 623759395b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さきっち
| 作成日時：2016年11月23日 18時
