14話 劇 ページ16
『あ、ほら。噂をすれば。
あそこにいるの、星野さんじゃない？』
「オハヨーのあいさつ、行っといで」
「さっさと行って来いよ」
「オマエら、楽しんでるだろ」
ちひろは爽歌の元へ駆けていく翔の姿を、悲しげな瞳で見ていた。
自分に向けられている視線に気づいたちひろは、寂しそうな笑顔を幼馴染みの二人に向ける。
ーー気づいてないんだね、翔。
男の子が女の子を「守りたい」と思う時なんて、
答えは1つだよ…。
「がんばれ、翔……」
窓の向こうには楽しそうに話す爽歌と翔の姿があった。
1年４組 教室
「───さて、来月末に開催される我が校の創立祭だが、1年4組は劇を行おうと思う」
担任：八王子
その言葉にクラスじゅうの男子が罵声を送る。
だが、八王子は明るくそれを返す。
「ははは、演劇部顧問であるオレのクラスになった宿命だ。
あきらめろオマエら。
異論は認めなーい」
ニコリと爽やかな笑顔を浮かべ自分を指差す。
「脚本オレ、監督オレ、演出オレだ！！
配役や係はくじびきで公平に決めるから安心しろ！！」
自分のクジを引き終わると、鈴木兄弟は後ろで集まって談笑をはじめる。
そこに、爽歌が来た。
「オレと輝は大道具だ。
星野は？」
「わ、私は衣装係です」
「主役はちひろだってさ。
あいつ、演技なんかできんのかな」
「ちひろちゃん、華やかだからきっとどんな役でもハマリますよ」
三人で談笑していると前の方から女子の嬉しそうな悲鳴と男子の歓声が聞こえてきて、翔と爽歌は首をかしげた。
「なんだ？」
隣でムスッとしている輝に翔が訊くと、どうやら準主役はAに決まったらしい。
ちひろとAは二人で顔を見合わせて苦笑いをしている。
「準主役はAか。
あいつなら大丈夫だな」
「Aちゃん、演技うまいんですか？」
「ああ、いつも演技の練習してる」
ニカッと笑いながらAのことを話す輝に、爽歌は、本当にAちゃんのこと好きなんだな…と思いながら笑顔を向ける。
すると男子がAに声をかけてるところを見て、輝はすぐにAとちひろの元へ駆けだした。
それを見届けて翔は隣にいる爽歌に声をかける。
「オマエも劇出れたらよかったのにな」
「え……」
すると爽歌は床に膝をつき、どよーんとうなだれる。
「す、すみません……。鈴木くんが協力してくれてるのに、私いまだに上がり性さえ、克服できてなくて…」
「(しまった……)
ま、まあそう落ち込まず、ゆっくり行こーぜ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 134人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「原作沿い」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
琴音 - めちゃくちゃ、キュンキュンしました！ありがとうございました🙇 (2022年4月12日 23時) (
レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 私も鈴木君！好きなので嬉しいいです！！ (2020年4月15日 3時) (レス) id: 623759395b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さきっち
| 作成日時：2016年11月23日 18時
