41話 ページ41
壁の前でうずくまった清助は頭から血を流し、苦しそうに息を吐く。
清助「たとえ戦争で負けても……その〈ひまわり〉だけは取られちゃなんねぇ……」
ウメノ「東さん!東さ───」
「お嬢様っ、急いでください!!」
使用人は上着で包んだ〈ひまわり〉を抱え込んだ。
四つんばいになったウメノが、煙と炎の向こうで座り込む清助に手を差し出す。
うずくまった清助は笑みを浮かべながら、右手を伸ばした。
清助「今度こそこの日本で……武者小路先生がおっしゃったような美術館で……世界中の人に、その〈ひまわり〉を……」
使用人がウメノを抱きかかえて廊下に飛び出した瞬間、応接間の炎が一気に膨れ上がり、清助の姿は見えなくなった───。
幸二「そんな話をずっと父から聞かされてきた……」
祖父の話を終えた幸二は、どこかうつろな目でカメラを見つめた。
幸二「父の死後、オレたちは〈芦屋のひまわり〉を探し続けた。その絵を祖父から受け取った使用人の言葉だけを頼りに……」
愛梨「使用人の言葉?」
愛梨がたずねると、幸二は無言で小さくうなずいた。
幸二「
目を見開いた次郎吉が「ま、まさか!?」とモニターに身を乗り出す。
次郎吉「わしが落札した〈ひまわり〉は……あ、〈芦屋のひまわり〉……!!」
園子「えっ!?」
蘭「燃えてなかったんだ……!」
蘭と園子は驚いて顔を見合わせた。
幸二「ああ。オレたち兄弟はとうとう見つけ出したんだ。アルルの古民家の屋根裏部屋にひっそりと置かれていた〈芦屋のひまわり〉を……だが、長年探し続けていた〈ひまわり〉が見つかったことにより、兄は心変わりしてしまった……」
まっすぐ前を向いていた幸二は、うつむいて瞳を強く閉じた。
幸二「〈ひまわり〉は、ゴッホが愛したアルルの地に置いておくべきだと……さもなくば、この場で亡きものとするとまで……。祖父と父の願いを裏切るようなことを言い出した兄を、オレは許せなかった……」
体の横で握りしめた幸二の拳に、ギュッと力が入った。
警備室の大型モニターに映った幸二は目を開き、再びカメラをまっすぐ見据えた。
幸二『……そして、〈日本に憧れたひまわり展〉のことを知ったオレは、学芸員として参加。おかげで〈芦屋のひまわり〉が日本に戻ってくる瞬間を見ることができた。祖父の代からの願いはかなった……』
139人がお気に入り
「名探偵コナン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さきっち | 作成日時:2016年10月25日 22時