20話 ページ20
コナン「灰原。オレたちはおっちゃんたちとここに残る。」
愛梨「哀はみんなと一緒に帰ってね。それと───」
灰原は「わかってる」と微笑んだ。
哀「このことは子どもたちに内緒ね」
愛梨「うん、お願いね」
コナンと愛梨が小五郎たちの元へ駆けていくと、老婆が灰原に微笑んだ。
「信頼されてるのね」
哀「私たちは、おばあさんが考えているような仲じゃ───」
老婆は「いいえ」とさえぎった。
「あなたは70年前の私と同じ目をしている。それはまるで……」
老婆が〈ひまわり〉に目を向けて、灰原もつられるような顔を上げた。
「ひまわりの花言葉……『私はあなただけを見つめる』。……でもね。見つめているだけでは、いつかきっと後悔する。私のようにね」
灰原が驚いて見ると───老婆は目尻に涙をためていた。
「人は失って初めて大切な物に気づく。それがどんな人でも……あの〈ひまわり〉のように……」
目の前の〈ひまわり〉を寂しげな表情で見つめる老婆に、灰原はかける言葉が見つからず、ただ黙っていた。
すると、
元太「灰原っ、帰るぞ!」
お土産を持った子どもたちが戻ってきた。
光彦「あれ?愛梨ちゃんとコナン君は?」
哀「急用ができたみたいよ」
光彦「え〜!またですか!?」
元太「とかいってまたトイレ行ってんじゃねーのか?」
子どもたちの方へと歩き出した灰原はふと足を止め、老婆を振り返った。
哀「忠告ありがとう。悔いが残らないようにするわ」
老婆は少し驚いた顔で灰原を見送ると、再び〈ひまわり〉に目を向けた。
「……清助さん……」
せつなげに目元を震わせた老婆は、そのベンチにいつまでも座り続けていた。
館長「【今夜、〈ラ・ベルスーズ〉の左(最初の模写)を頂きに参ります 怪盗キッド 怪盗ブラック】……」
応接室の一人掛けのソファに座った館長は、タブレット端末に表示されたキッドとブラックの予告状を読み上げた。
館長「この予告状がどうして当美術館の〈ひまわり〉が狙われるということになるのでしょうか?」
「〈ラ・ベルスーズ〉とは日本語で『ゆりかごを揺らす女』です。〈ひまわり〉のことではありませんよ」
館長とその部下は眉をひそめた。
〈ラ・ベルスーズ〉はゴッホがアルルで仲良くしていた郵便配達人、ジョゼフ・ルーランの奥さんを描いたものだ。
それがなぜ〈ひまわり〉に結びつくのか───?
右側のソファに座った中森は「いいえ」と首を横に振った。
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作者名:さきっち | 作成日時:2016年10月25日 22時