12話 ページ12
すると、愛梨の腰巻にしていたパーカーのポケットに入れたスマートフォンのバイブが鳴った。
出発ロビーでしゃがみ込んだ蘭は、すぐに思い立ってAに電話をかけた。
はやる鼓動を抑えながら、携帯電話を耳に当てる。
呼び出し音が数回鳴った後、留守番電話に切り替わった。
『ただ今、電話に出ることができません。発信音の後にメッセージをお願いします……』
蘭「そんな……」
青ざめた蘭は、携帯電話を強く握りしめた。
そして涙をこぼしながら、祈るように目を閉じて、携帯電話を耳に当てる。
蘭「A……お願い……出て……」
そのとき、プツッと電話に出る音がした。
愛梨『ごめんね、蘭!今、キッドとブラックを追ってるの!後でかけ直すから!!』
Aの声が聞こえたかと思うとすぐに電話が切れて、蘭はしばし呆然と終和音を聞いていた。
蘭「……良かった……!」
止め処なく涙があふれてきて、携帯電話をひざに置いて顔を覆う。
出発ロビーにいた人々は、うずくまって泣いている蘭を不思議そうに見つめながら通り過ぎていった。
愛梨は蝶ネクタイ型変声機をコナンに返し、スマートフォンを腰巻のパーカーのポケットにしまうと、上空を見回しながらビルの屋上を走った。
(どこだ?どこに……!?)
屋上の端で立ち止まり、ぐるりと空を見上げる。
すると、海沿いに立ち並ぶビルの屋上で風にはためく純白と漆黒のマントが見えた。
屋上のへりに立ったキッドとブラックはつばに手をかけると、フッと笑いながら体を前に傾けて飛び下りた。
ハンググライダーの翼が開き、右に旋回しながら飛んでいく───。
コナン「逃がすか───!!」
コナンは屋上のへりに足をかけ、キック力増強シューズを起動した。
そしてどこでもボール射出ベルトのボタンをすばやく押す。
バックルからサッカーボールがふくらんで飛び出すと、真上に軽く蹴り上げ、右足を後ろに大きく振り上げた。
コナン「行っけぇ───!!」
コナンが力強く蹴ったボールが、キッドとブラックを目がけて一直線に突き進む───!
すると、キッドはすばやくトランプ銃を構えた。
銃口から発射されたトランプカードがサッカーボールに突き刺さり、キッドとブラックの目前で破裂した。
キッドはニヤリとして、ブラックと一緒に愛梨を方を見て微笑むと、海に向かって旋回した。
追い風に乗ったハンググライダーはあっという間に小さくなり、やがて建物の陰に消えていった───。
コナン「クソォ!!」
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作者名:さきっち | 作成日時:2016年10月25日 22時