君が壊れるその前に。【赤羽業】

熱くの時間 ページ4

『ここが私の家……？』









なんだか余り、実感が沸かない。









家族は。私の家族はここに住んでいるのかな。









鞄から自分の家の鍵だと思われる物を取り出す。









ｶﾞﾁｬﾘ ｷﾞｨｨｨ









『たっ、ただいま……』









ｼｰｰｰｰｰｰｰｰｰﾝ









“ただいま”と挨拶をしても、返ってこない。









『学秀さん。私の家族はいないんですか？……あ。いないの？』









敬語を禁止されていることを思いだし、慌てて言い直す。









「……ッ!!家族のことも忘れてしまったんだな。


＿＿＿＿＿＿死んでいるよ。」









『えっ…？お父さんとお母さん、二人とも……？』









動揺が隠しきれない。









目頭が熱くなる。









「お前のお母さんは病気で。お父さんは……こ、交通事故で……」









じわりと涙が溢れる。







『やっ、やだっ……。ごっ、ごめ………なさっ……』









苦しい。今の私に、お父さんやお母さんの記憶は存在しない。









けど。それでも。









『かな……しっ……。キャッ!!』









学秀さんに突然抱き締められた。









「君には僕がいる。だから、泣くな」









『………っはい………』









学秀さんは、私のことを大切にしてくださる優しい方。









そんな人の好意を、ムダにはできないの………。

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