【募集企画】東方幻想記録物語 14巻 (ページ6)

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第八戦：人気者の裏の方　二条言ノ葉ページ6

「私、あの女神様嫌いなんだよ。なぜって悪意が無いからね。―――さてと、随分と啖呵を切られてしまったか。行ってくるよ桐真」
「あれ、言ノ葉さん！？いつから寝てたんですか」
「君が外来人と戦ってた辺りから。言葉は薄情な奴だねぇ」

そんな事ありません、とむくれる桐真をよそに、一条言葉改め私―――二条言ノ葉は舞台に上がる。先刻啖呵を切った少女―――鬼灯真央は、私の正面で仁王立ちしていた。

『さァ、第八戦が始まるようだなエインセル』
『だねぇ。さっきの大演説はエンターテイナーとして見事だった。鬼灯真央には期待しているよ』
『そりゃお前の主観だろ』
『でもねぇ、実際に彼女は結構なやり手だ。単純な経験の差が物を言うか、それとも……』

「二条言ノ葉だ。よろしく頼むよ」
「さっきも言ったけど、私はお前に負けるつもりはない。悪いけど勝たせてもらうよ、人気者さん！」
「望むところだね」

『それでは行くぞ！第八戦、二条言ノ葉VS鬼灯真央！スタートだッ！』

「うん、ではまずはこれで行こうか。言霊『噂話にご用心』！」

私は空へと舞い上がり、スペルカードを発動した。大量に展開される魔法陣からは大量の使い魔―――つまるところ、私が広めた噂話から創造された新しい妖怪達―――が飛び出す。妖怪達は縦横無尽に舞台上を駆け回り、弾幕を放ちながら真央を隅まで追い詰めた。

「編集の力舐めんなオラァ！『その時、不思議な事が起こった。妖怪達が何故か突然消えたのだ』！」

何かが弾けるような音と同時、妖怪達は真央の言葉通り突如消失した。

「なるほど、これが編集の力……厄介だねぇ」
「からの、『私は言ノ葉の背後をとった』！」
「……うぉう」

背後から、微かに撃鉄を上げる音が耳に届く。振り返ればそこには拳銃を構えた真央が居て、引き金に指をかけていた。真央が指を引き、発砲音が鳴り響くと同時、私は―――否、私の周囲を浮遊する口(・)が、微かに呟く。

《残念、それは届かないよ》

「―――ッ！？」

ノイズ混じりの歪んだ声は、不気味なほどよく響いた。私の頭蓋をめがけて発砲された銃弾は歪な弾道を描き、遠く彼方の空まで飛んでいく。

「あー、ヒヤッとした。これは言葉じゃ対処できない相手だったね。ほらね桐真、私って寝てる時の方が強いだろ」

私はにこりと―――言い換えれば意地悪く―――客席に向かって微笑みかける。ふわりと舞台に着地した私を、真央はじっくりと観察していた。