【募集企画】東方幻想記録物語 14巻 (ページ29)

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最強を見る最強　ノルンページ29

そこは一切の能力を受け付けない、隔絶された空間だった。
―――パレットハコニワ、と呼称されるそれに入れる『人間』は居ない。居るのは人間の域を超えた怪物だけだ。そこに、一人の少女がやって来た。

「御機嫌よう白華。絵の進捗はどうだい？」

白いワンピースと金の髪を揺らし、蒼い瞳を爛々と輝かせる少女―――ノルンは、絵を描いている眼鏡の少女―――小虎白華に話しかける。対して白華は、カンバスから視線を移さずに答えた。

「この前のはとっくに描き終わって向こうに置いといてる。今描いてるのは中二病少女が持ってきた死体だよ」
「へぇ。相変わらず筆が速いな。……ところで、ディアーはどうしてるんだ？カルパスも置いて出て行くなんて珍しい」

パレットハコニワに置きっ放しにされたカルパスの一つをひょいと摘み、無断で食べながらノルンは言う。ディアボロは無類のカルパス好きで、出て行くときは大抵カルパスを持って行くのだ。放置してあるとは余程の事である。

「中二病少女なら、大決闘祭の出番の為に少しばかり細工をしてる。なんでもインパクトのある登場をして観客の度肝を抜きたいとか」
「なるほどね。あー大決闘祭かぁ、私も参加してくれば良かったなぁ」
「……でも君はエントリーを受け付けている時、外の世界でコミケに行っていたじゃないか」
「そりゃそうなんだけど。だってコミケより優先すべきイベントとか無いだろ？ディアーから頼まれ事もされてたしね」

ノルンはパレットハコニワをしばらくうろうろしていたが、ふと考えてから、パレットハコニワの外へと足を向けた。

「ちょっとディアーの決闘が気になるから見てくるわ。じゃーねー」

ん、と白華はどうでも良さそうに返事する。ノルンはパレットハコニワを出て、「えーっとなんだっけ？」と呟き、そして「そうだそうだ」と指を鳴らした。

「影無きは光に非ず、棘無きは薔薇に非ず、偽り無きは愛に非ず」

すると幻想郷への扉が開く。ノルンがその扉を抜けると、すぐ目の前には大決闘祭の会場があった。丁度ディアボロが登場する決闘の直前のようである。

「頑張れディアー。面白い決闘になーぁれ」

悪戯っ子の小学生のように、ノルンは微笑んだ。