9・いざ取引先へ ページ9
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翌日、出社してまず来客カウンターの掃除をする。役員の人達に面会に来たお客様は一度こちらでお待ちいただき、それからそれぞれの執務室へ手の空いている秘書がご案内する、というのがこの会社の流れ。
夏油さんが来る迄、私もそこで用意をしていたらエレベーターが到着し、私の上司がその長い足でスタスタとこちらへ来る。
『専務、おはようこざいます』
そこにいる秘書達が口々に挨拶し、私もそれに習う。表情を変えることなくこちらを一瞥し、おはよう、とだけ言った専務は自分の部屋へ歩いて行った。
今日は午後から専務の外出に同行する。必要な書類をかばんに詰め込み、アポの時間に間に合うように執務室へ迎えに行った。駐車場へ向かうエレベーターの中で夏油さんが口を開いた。
今日行くA社は昔からの取引先だよ、と教えてもらい自分で調べた情報と照らし合わせながら確認していく。今日初めて相手先に同行するから緊張していた。夏油さんは、きみが今までしてきたみたいに臨んでくれたらいいよ、と言った。今まで__?
「受け付けの時、って事ですか?」
夏油さんは私の事を知っていたのだろうか。いや知らないはず。受け付け時代に会った事も話した事もない。あのビンタの時が初めてだ。あ、また思い出しちゃったじゃない‥
「取り柄もなく、普通でしたよ私。え、なにか変な噂でも聞いたんですか」
ギクリとした私をちらりと見る
『ふふっ、内緒』
***
A社へ着き先方の専務室へ案内される。夏油さんの横で一生懸命サポートをした。柔らかい態度の中にもしっかり芯のある雰囲気で、会社の為に、と白熱する話をしている事にとても驚いたというのが本音
普段の、ふわりと優しい彼とはまた違った一面だった。仕事の時はこんな顔するんだなぁ、なんて新たな発見をした気分だった
帰りの車の中、小さくため息をついた夏油さん。お疲れさまです、と声をかけ先程思った事を切り出す
「私、初めて夏油さんのお仕事に同行しましたけど、なんだか感動しました」
あの時、思った事を素直に言った。だって本当に驚いたんだもん。掴みどころのないと思っていた夏油さんの中に隠れた熱いものを見れた気がしたから
「私、ちゃんと夏油さんをサポートできるようになりたいです。夏油さんに安心して秘書を任せてもらえるように、いっぱい勉強します!」
隣の彼は少々面食らったような顔の後、ニコリと微笑んでくれた。
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すみっことかげ(プロフ) - 歯磨き子さん» コメントありがとうございます!嬉しいです☆お、ここにも夏油さん推しがいらっしゃいましたか!!かっこいいですよねぇ本当! (2021年10月1日 16時) (レス) @page48 id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
歯磨き子 - キュンキュンしすぎて・・・ありがとうございます。夏油推しには最高です、夏油様どこにいるんでしょうか() (2021年10月1日 16時) (レス) @page48 id: 0d41b786f3 (このIDを非表示/違反報告)
すみっことかげ(プロフ) - こんぶさん» コメントありがとうございます!夢主ちゃんばりに驚いてもらえましたかね?面白いと言ってくださり嬉しいです!何故こんなおかしな事になってるのか、次話で明らかになるのでお楽しみに!! (2021年9月26日 7時) (レス) id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
こんぶ - NYの新事実に目玉が飛び出る所でしたw私もニューヨークだと思っていたので。本当に面白いです(*^^*) (2021年9月26日 3時) (レス) @page44 id: 7f18273dc2 (このIDを非表示/違反報告)
すみっことかげ(プロフ) - しゅーくりーむさん» コメントありがとうございます!わあ!そう言っていただけて嬉しすぎます!夏油さんかっこいいですよね、やばいですよね。理想を崩さないように頑張って書きますね!! (2021年9月23日 8時) (レス) id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみっことかげ | 作成日時:2021年8月12日 16時