秘書ってペットじゃないの、知ってます？【夏油傑】

46・伝えたいこと ページ46

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未だに訝しげな私に彼は、


『あの人はクリスさん。支社建設にあたってお世話になっている方なんだけど、前パーティ行っただろう？あの時わたしと一緒にいたさやの事を酷く気に入ったみたいで。日本文化にも興味あって“KAWAII”が大好きだから話がしたい、会わせろって言うけど彼女日本語話せないし。だから“あの子はわたしの大事な子だからダメだよ”って言ったら余計に会わせろって煩くて‥』


「‥‥はぁ」


『ネイティブだしめちゃくちゃ喋るからAも困るだろうな、と思って最近はこちらから出向いてたんだ。硝子は喋れるから連れて行ってただけ。あとちなみに彼女、結婚してご主人はそこの社長さん。成人する息子さんもいるから』


「‥‥‥‥」



『でも今日どうしても打ち合わせが必要になって、急遽来てもらう事になったんだ。久々に君のこと見れて可愛いって喜んでたよ。まあそこは同感なんだけど、』





えーっと、なんだっけ。
何がどうなってるんだっけ？



つまりは、全て。


私の勘違い、


という事でいいのかな？




そんな視線で恐る恐る夏油さんに目を遣ると



『なんか色々と想像してくれてたみたいだけど、』

「‥‥‥」



かた、と立ち上がり



「Aの早とちりもここまでくると‥」



はぁ、と悩ましげに溜息をつきながら
気づけば目の前まで迫るその人。



今までの経験から言うと

たぶんあの目をしている彼は‥‥




ジリジリと距離を詰められ気づけば私の後ろにはデスク。
伸びてくる手にビクリと肩を揺らすと、優しく頬に触れる指先。あぁもう‥



『A？』

「‥は、い」



夏油さんの声が近くで聞こえる。
こんなふうに見つめられるのも
なんだか久しぶりで胸が苦しい。



『さっきの涙の理由、教えて欲しいんだけど？』

「っぅぐ‥」



あぁ、もう逃げられそうもない。



観念して、

どうにでもなれと声を絞り出した。





「夏油さんの秘書で、いたいです」

『うん』

「NY(ニューヨーク)に行っちゃうのかと思って、寂しかったです」

『うん』

「最近夏油さんが素っ気なくて、私が邪魔だから同行もさせてもらえないんだって。嫉妬して‥辛くて」

『‥ん、それから？』

「それ、から‥」







『言ってよ、A‥』






私の伝えたいこと、それは___






「好き、です‥‥」



『っ、』




夏油さんの息を呑む音が聞こえた。




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