秘書ってペットじゃないの、知ってます？【夏油傑】

28・廊下は走るもの ページ28

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小さく息を切らしノックもせず専務室へと入った私を見て夏油さんは少し驚いた表情


『おはようA、そんなに急いで‥どうしたの？』


もしかして、早く私に会いたくて走ってきてくれたのかな？なんて微笑む夏油さんが、今はどうしても憎らしくて


いつもなら軽くあしらう所が何故か胸が詰まって言葉が出て来なかった。




それからはやはり副社長も忙しいみたいで、見かける事がなかった。ずっと出張行ってくれよ、さすれば私の心に平安がもたらされる。よし、毎晩月に祈ることに決めた



夏油さんもあのパーティの日以来、変態具合が少し落ち着いてきている。過激なものには免疫がないけど、頭ぽんぽんくらいは別に嫌じゃないけど‥とか思ってる自分がいて


ん？私さっきおかしな事言ったな、まるで夏油さんに触れられない事が寂しいみたいな‥



デスクトップに向き合う彼の横顔を何度も盗み見ては、仕事に集中できないAだった。





基本、専務室から出してくれない夏油さんも、お手洗いだけは一人で行く事を許可した。ついてくるって言われてもそこだけは断るけど。


軽くお化粧を直していると先輩たちが入ってきた。なんだかお久しぶりです、なんて話していたら先輩たちの様子がどこか変で‥


先輩達は私にハズレクジ引いたね、と慰めのつもりなのか少しだけ笑いながら言った。


仕事は出来るのにあんな何考えてるかわからない人なんかの秘書、絶対嫌だよね〜と口々に言われて、何いってんのこの人達、と思った




「専務は、真面目で仕事熱心な方ですよ」




私はそれだけ伝えてその場を去った。夏油さんの事を理解されてない事が無性に悔しかった



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ある日の午後、なんだかお疲れの夏油さん。
どうしたんですか？と聞くと、


『悟、今アメリカなんだけど時差があるだろ？真夜中に電話してきて寝不足なんだ』


うわー、やりそう。非常識‥
ここの所、仕事も立て込んでいたし少し休んでもらいたいな‥





「夏油さん、近くのカフェでテイクアウトしてきます。少し休憩しましょ？」


コーヒーでいいですか？と聞くと、わたしも行くよと立ち上がる


それじゃ休憩にならないです、って言っても聞いてもらえず私の頭にぽん、と手を置いた彼は笑った



『お散歩だね、A』



久しぶりなこの感じが嬉しくて‥



胸が少しだけキュン、としたのはここだけの話




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