秘書ってペットじゃないの、知ってます？【夏油傑】

17・実は激情型です ページ17

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そうしている間に目的階に到着した。チン、と聞こえた音と共に開いたドアの向こうにはたくさんの人。行こうか、と歩きだす半歩後ろを着いていく。



受付を済ませ会場に入ると一気に集まる視線。年配の方から若い方まで、夏油さんは次々に声をかけられていてその光景に圧倒された。たまにおかしな事も言うけど、こうして外に出るとやっぱり凄い人なんだなぁ、なんて。



たまに、こちらの方は？と聞かれ夏油さんは『わたしの秘書です』と紹介してくれた。夏油さんに恥をかかせないためにも笑顔でしっかりと挨拶をした‥つもり。



年配の方はみなさん、可愛らしいねと褒めてくれた。もちろん社交辞令だと理解しているのでそこも上手に返せていたと思う‥たぶん。



何人かに『夏油さん程見た目が良いと秘書さんも選びたい放題でしょ』『若い専務ってだけでこんな可愛い子連れて歩けていいご身分ですねぇ』とわかりやすい嫌味を言われた。



何言ってんのこいつら、とイライラを隠しながら夏油さんを見ても、何も言い返すどころかニコニコしながらのらりくらりと話をするだけで。



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「‥夏油さん、
　さっきのイラつかないんですか？」



挨拶の波が落ち着き、ドリンクスペースで私はどうしても我慢できなくて口を開いた。



『？、んー、そうだね。昔はイラッとする事もあったけど、今はないかな』

「何でですか、私は今大変胸くそ悪いです」



あんな言い方、許せない‥とさっきの狸みたいなどこかの会社の部長をジトと睨んだ



そんな私の様子に少し驚いた様子の夏油さんは笑みをこぼした



「なんで笑ってるんですか」

『ふふ、なんでだろうね。Aが珍しく怒ってるから、かな？』

「言ってる意味がわかりません」

『Aって意外と激情型？』

「これでも他人の前だと抑えてるつもりです」

『私は、他人じゃないの？』

「夏油さんは上司です。秘書になってまだ日は浅いですが、仕事に対して誠実な所を私は知ってますし尊敬もしてます。何も知らない人に夏油さんを“肩書きだけ”みたいに言われて、そんなの腹立つじゃないですか‥」




本心だった。あんなあからさまな嫌味を言われて平気な人なんていない。慣れることはあってもそれは気持ちに蓋をして何も感じないようにしているだけ。傷ついてない訳ではない。




今までもこんな風に人知れず傷ついたりしてたのかな、と自分の知り得ない過去の夏油さんを想像して、私の胸はチクリと痛んだ





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