▲母 ページ9
子供たちの声がしたのでとっさに振り向く。
そしていつのまにか日が落ちていたことに気がついた。
懐かしい、と思った。
自分にもこんな愛らしい時があったのだと。
自分を愛してくれた親がいたということも
今ではどんな顔だったのかすら覚えていない。
ああ・・・でも、いや・・・
たしか、美しかった気がする。
いつか見た母の横顔が
どうしようもなく美しかった気がする・・・
ここで僕は目をつむり
薄れていく子供たちの声を聞きながら
若干のこされている思い出をよみがえらせた。
「・・・」
宗「・・・；」
「・・・宗次郎、何か言いたいことはある？」
宗「・・・；；」
母と一対一で正座をし、母は厳しい顔で僕を見て
それまた厳しいことを言った。
僕はうつむきその言葉の重みに耐える。
母は・・・Aといった。
美しく、豪気で、一家の大黒柱のような人だった。
あ「なぜ花瓶を割ったの」
宗「・・・」
あ「こっちをお向きなさい宗次郎っ」
宗「〜っ！！」
僕はしぶしぶ母の方を向いた。
すこし怒っているように見える・・・ていうか怒っている。
宗「走っていたら・・・割れた」
あ「・・・はあ、もう家の中で走ってはいけないよ」
宗「うん・・・はい」
母は「よし」といって薄く笑った。
強い顔だ。
あ「さあ宗次郎、一緒に買い物へ行こうか」
宗「うんいく！！」
僕は勢いよく立ちあがった。するとよろけてこけてしまった。
この時はまだ5歳・・・あまりに急だったので泣いてしまった。
そして母はやれやれ、といった顔で僕に近づいて
きゅっと抱きしめた。
あ「お前は本当に泣き虫だな。ほれ、よしよし」
ゆるく温かい手で僕の頭をなでた。
すると、なんとなく気持ちが落ち着いた。
すっと、目を開けてまた歩き出した。
そういえば何故母が死んだのかは覚えていないな・・・
都合のいい思い出だ。
また、母の思い出がでてくるなんて・・・思いもしなかった。
もっともっと思いだせればいい。
そうすれば
きっとこの冬も暖かくなるかもしれない。
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とかげ - 沖田さん最高です！！ (2019年9月16日 16時) (
レス) id: e1cdc78651 (このIDを非表示/違反報告)
咲間(プロフ) - はるかさん» ありがとうございます！！この3人はなかなか見当たりませんよね；これからもがんばらせていただきます！ (2014年9月24日 18時) (レス) id: 5e4413b5a1 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 私もこの３人大好き何で、このような作品があってとても嬉しいです！これからも頑張って下さい(*^^*) (2014年9月23日 9時) (レス) id: 85c5d33bca (このIDを非表示/違反報告)
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