29話 ページ30
こんなに人を愛しいと感じたのは
もしかしたら初めてかもしれない。
初めて知ったA様の体の小ささも、微かに伝わる震えも、吐息も何もかも
この時間がもし永遠に許されるモノならば
己の身が朽ち果てるまで抱き留めていたい。
そう思うのは悪いことだろうか
罪なのだろうか
ここまで大胆な行動をしたというのに、自分の気持ちは喉の奥に引っ掛かって取れはしない。
声に出そうとすれば嗚咽が漏れそうで
涙が溢れそうで
武士として、男としての意地を捨てられたならもっと自分は素直になれるだろうか
しかしこれが最後の賭けなのだ
今しか時間はない
恒興「…ご無礼をいたしまして申し訳ございませんでした。…実はA様にお渡ししたいものがございまして。」
A様からゆっくりと離れ、自分の脇差しと、小さなお香瓶を並べてA様の前に置いた。
恒興「これが…某の精一杯の気持ちにごさいまする。」
A「本当に…私がいただいても…?」
A様は涙を溜めた大きな瞳をさらに大きくして聞いてきた。
そして、思い出したかのように自分も有ると言って隣の部屋へ向かっていった。
A「…これ。よろしければ」
きれいな包みにくるまっていたものは、金平糖と筆入れだった。
A「戦には出ないとおっしゃっていたので、室内の仕事が多くなるのではと思い筆入れにいたしました。持ち運べて便利なので。」
恒興「わざわざのご配慮、ありがとうございまする。」
A「いいえ。これくらいの事しかできませんので。」
そんなことはない
こんな素晴らしくありがたい物を貰えるなんて、わしはなんて幸福者なのだ。
ただ
一つ我が儘をいうとすれば
わしはA様が
一番欲しい
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カックン - 文才が有りすぎます。3分の1自分にくださいぃ〜(泣)更新待ってます! (2017年10月23日 16時) (レス) id: fd8c0bdfed (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - 面白かったです\(●°ω°●)/更新待ってますo(>∀<*)o (2016年1月18日 1時) (レス) id: f74b6eaea5 (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - ホントに面白です( ´艸`)続き頑張ってください (2015年1月8日 19時) (レス) id: 17070948cc (このIDを非表示/違反報告)
みけ - 更新まってます!がんばってください! (2015年1月7日 0時) (レス) id: 13644432d2 (このIDを非表示/違反報告)
☆Dream☆(プロフ) - 更新まってます (2014年12月24日 19時) (レス) id: e48c81f2a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紗華 | 作成日時:2014年10月24日 19時