姿を消した ページ3
「は？」
ショッピは信じられない、という顔で呆然とした。
だって、昨日。
昨日、俺は倒れてるあの人を見つけて、基地の部屋へと寝かせたんだ。
ショッピは思考よりも早く体が動いた。
Aの部屋の扉を勢いよく開ければ、そこにAはいなかった。
軍服は畳まれたまま机の上に置かれており、カーテンが不規則に揺らいでいる。
嘘だ。
なんで、いなくなったの。
視界がぼやけ、足に力が入らない。
ショッピはその場に蹲り、嗚咽を漏らす。
Aの残り香が漂う部屋は酷く居心地が良かった。
優しく包まれて、そのまま眠ってしまいたいくらいには。
ショッピが目を腫らして戻ってきたとき、兄さんはその顔を見て悲しそうな表情をした。
「兄さんはなんでここに？」
ゾムが話を切り出せば、兄さんはそちらに意識を集中した。
「今日がその日だろ？俺も我々軍の人間だから一緒に行こうと思っとったんや」
「そういうことか」
グルッペンは納得したように頷いた。
そして兄さんの目をじっと見つめ、その口から言葉を零した。
「兄さんは、Aの居場所を知っているんじゃないか？」
「ッ……」
「そうなんか兄さん！？」
グルッペンの一言に兄さんは息が詰まるような感覚になった。
こいつの、こういうところが良くて、嫌いだ。
知らないはずなのに、まるで知っているかのように詰めてくる。
誰も、嘘を吐けない。敵わない。
だけど、今だけは。
『ありがとう、兄さん』
守りたいんだ。
「さあ、知らんな。俺はお前らが出るのを外で待ってたところをショッピと遭遇したってだけだ」
「……そうか」
まさかそう返されるとは思っていなかったのだろう、グルッペンは苦い顔をした。
それ以上問い詰める気もないらしい。
時間も時間だ。
「……全員準備しろ、行くぞ」
グルッペンの掛け声に全員の気が引き締まる。
全ての荷物を持ち、基地を出る。
「……もう、さよならなんだね」
ひとらんらんが惜しそうに振り返る。
ボロボロで古い基地だが、ひとらんらんの目には何故か眩しく見えた。
「……死んでないよな、A」
懇願するかのようにシャオロンが呟く。
その目には今にも零れそうなほどの涙を溜めていた。
まだ、希望は捨てられなかった。
Aがそこにいることを願って、絶望的な状況のなか歩を進めた。
「やあ、諸君。先日ぶりだね」
その希望は、すぐに打ち砕かれるなんて知らないまま。
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雲英(プロフ) - ロクロさん» 勉学は苦手ですが、表現や言葉選びなどを褒めていただけるのは本当に嬉しいです。ありがとうございますXD (2022年1月30日 16時) (
レス) id: 18a835abc9 (このIDを非表示/違反報告)
ロクロ - おもしろいです。見させてもらってます。落ち着いた表現や言葉の選び方なので主さんの頭の良さが伺える…これからも頑張ってください、応援しています。 (2022年1月27日 18時) (レス) @page10 id: 65d7101284 (このIDを非表示/違反報告)
雲英(プロフ) - 脅威のセラフ@wrwrdファンさん» 前作からありがとうございます、そう言っていただけて嬉しい限りです:D 遅くなってしまいましたが受験頑張ってください、応援しています。 (2022年1月18日 22時) (レス) id: 18a835abc9 (このIDを非表示/違反報告)
雲英(プロフ) - きなこんこんさん» ありがとうございます、そのお気持ちが嬉しいですし励みになります:) (2022年1月18日 21時) (レス) @page7 id: 18a835abc9 (このIDを非表示/違反報告)
脅威のセラフ@wrwrdファン(プロフ) - キャー！妹の方です！ファンです！受験が終わったら馬鹿姉貴にも紹介します！大好きです！ああもう！ホントに大好きです!!!!!前作も勿論読破させていただきました！これからも応援しています！頑張ってください！ (2021年12月12日 16時) (レス) @page5 id: 602d714d2e (このIDを非表示/違反報告)
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