☆って。 ページ49
特に失くした物はないけど。
いや、毎日落とす物はあるな。ため息。最近は妙に増えた気がする。
「ありがと。おばあちゃんももう落としちゃダメだよ？」
ニカッと笑って目の前に立ったおばあちゃんを座ったまま見上げた。おばあちゃんが背中でうまく日差しを遮ってくれていたけれど、眩しくて少し目を細めた。
そんな俺を見下ろしながら、もう一度感謝の言葉を優しい口調で言うと俺の前から立ち去った。
瞬間、何かで反射した日差しが目を射るようで、思わずきつく目を閉じた。それと同時に何故か手をぎゅっと握りしめた。
瞼の裏には黒い斑点が見える。まだチカチカしそうな目を閉じたまま掌の中の輪っかを指で探るように確かめた。
俺のものではないけれど、なぜかいつも身につけていた。
父ちゃんに言われたからとかじゃなく、そうするのがまるで自然なことのように。
ゆっくりと瞼と掌を開いた。陽の光が輪っかをキラリと輝かせた。
「綺麗。」
突然降ってきた声に全身が反応する。声の主は座り込んだ俺の前にさっきのおばあちゃんみたいにしゃがみ込んだ。
「指輪。綺麗だね。あ、おばあちゃんが、あなたにコレ渡してって。」
目の前のその人が手の平に乗せた小さな袋を俺に見せた。
それを受け取り中身を確認した。俺よりも先にその人が小さく驚いた声を上げた。
「同じ…？おばあちゃんが探してた物ってあなたのだったの？」
世の中には理屈では説明できない事がある。
父ちゃんがいつかそんな事を言っていた。今ならわかる気がするよ。
二つ揃った指輪を包み込むように握りしめた。
「え…泣いてるの？大丈夫？」
戸惑い交じりの声に涙声で答えた。
「…なんか、嬉しくて。」
「そう、なんだ。なら良かった。」
そう言いながら先に立ち上がった君が俺に手を差し出した。その手を掴むと胸が跳ねた。
何も知らないはずの君の事を、とてもよく知っている気がするよ。
ふふと笑った目の前の君を、今度は驚かせてみようかな。
A。
そう呼んで。
きっと目を丸くする君の顔を想像して笑顔が溢れた。
今、この瞬間。
俺はとても幸せだ。
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リュリュ(プロフ) - asamiさん» asamiさん☆こちらでもあちらでもありがとうございます！長い時間かけたにも関わらず、最後を見届けてもらえて嬉しいです！またいつか…☆本当にありがとうございました！ (2019年1月23日 21時) (
レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
asami(プロフ) - お久しぶりです！待ってましたよ(^^)ありがとうございます！リュリュさんのお話大好きだから、これでおしまいだなんて寂しいです。。でも…また会えますよね？(^^)素敵なお話をありがとうございます！ (2019年1月23日 19時) (レス) id: d53227b1bf (このIDを非表示/違反報告)
リュリュ(プロフ) - うふさん» うふさん☆お返事遅くなりました。きゃー！涙雪！ありがとうございます。待っていてくださって嬉しいです。うふさんのコメントが優しさで溢れてて感激です。どうぞ最後までよろしくお願いします☆ (2018年5月30日 23時) (レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
うふ(プロフ) - リュリュさんおかえりなさい！お休みされてる間も私の大好きな涙雪を何度も読んでは、リュリュさんのことお待ちしていました(^-^)優しさが溢れるようなリュリュさんの作品が大好きです。このお話も楽しみにしています！ (2018年5月29日 21時) (レス) id: 70c23ef30e (このIDを非表示/違反報告)
リュリュ(プロフ) - はるさん» はるさん☆読んで頂けるだけで嬉しいのに、コメントまで…。いつもありがとうございます(*^^*)またお会いできて嬉しいです。最後までよろしくお願いします！ (2018年5月28日 13時) (レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リュリュ
| 作成日時：2016年12月30日 0時
