☆４３ ページ43
「ねぇ。なんでピクニック？」
期待通り卵焼きが多めに入った弁当を食べた後、あまり大きくもないレジャーシートに寝転んで空を仰ぎ見る。眩しくて手を翳そうとした時、Aが自分の座る場所を少し移動して俺に影を作ってくれた。
いつもそうだった。
何も言わなくてもいつも心地良い空間を作ってくれていた。
変わらないその行動が、ますますAなんだということを決定付けるみたいで、心の奥が温かくなる。
「凄く天気が良いよって、お日様に誘われた。」
言いながらふふと笑い膝を抱えて座るAの後ろ姿を肘枕しながら眺めた。
影になったその輪郭から陽の光が漏れて、なんだかAが輝いてるみたいで眩しくて目を閉じた。
あんまり遠くに行かないでね。
向こういってくる！と言った智にそう答えるAの声は、うたた寝をしようとする俺にとても心地良かった。
「ねぇ。」
Aが振り向いたのがわかった。耳に届くAの声が近くなったから。
けど俺はもう眠りに入る寸前で返事はせずにただ耳を傾けていた。
Aはまたふふと笑って、俺の髪を優しく撫でた。
「凄く気持ちいいね。」
声は出さずに僅かに頭を動かして「そうだね」と応える。
「智も楽しそうだね。」
また同じように応えた。
「幸せだなぁ…。カズは？しあわせ…？」
しあわせ…か。
今ならほんの些細な事でも幸せだと感じられる。
今度は頭を少し大きく動かして「うん」と声を出した。
「良かった。」
その声は想像以上に近く、その後すぐに前髪越しに俺の額に何かが触れた。
凄く擽ったくて、空いている手でAに触れようとした瞬間、瞼の裏に強い光を感じ思わずぎゅっときつく目を閉じた。
「A？」
眩しさに目を慣らすように目を細めながら見たその場所にAはおらず、荷物の置かれたレジャーシートの端が風でパタパタとはためいていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1654人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リュリュ(プロフ) - asamiさん» asamiさん☆こちらでもあちらでもありがとうございます！長い時間かけたにも関わらず、最後を見届けてもらえて嬉しいです！またいつか…☆本当にありがとうございました！ (2019年1月23日 21時) (
レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
asami(プロフ) - お久しぶりです！待ってましたよ(^^)ありがとうございます！リュリュさんのお話大好きだから、これでおしまいだなんて寂しいです。。でも…また会えますよね？(^^)素敵なお話をありがとうございます！ (2019年1月23日 19時) (レス) id: d53227b1bf (このIDを非表示/違反報告)
リュリュ(プロフ) - うふさん» うふさん☆お返事遅くなりました。きゃー！涙雪！ありがとうございます。待っていてくださって嬉しいです。うふさんのコメントが優しさで溢れてて感激です。どうぞ最後までよろしくお願いします☆ (2018年5月30日 23時) (レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
うふ(プロフ) - リュリュさんおかえりなさい！お休みされてる間も私の大好きな涙雪を何度も読んでは、リュリュさんのことお待ちしていました(^-^)優しさが溢れるようなリュリュさんの作品が大好きです。このお話も楽しみにしています！ (2018年5月29日 21時) (レス) id: 70c23ef30e (このIDを非表示/違反報告)
リュリュ(プロフ) - はるさん» はるさん☆読んで頂けるだけで嬉しいのに、コメントまで…。いつもありがとうございます(*^^*)またお会いできて嬉しいです。最後までよろしくお願いします！ (2018年5月28日 13時) (レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リュリュ
| 作成日時：2016年12月30日 0時
