☆３９ ページ39
期待を込めて階段を下り始めてすぐに速度を緩めた。
智と雅紀の声がしたから。
「そりゃ…戻ってくるわけねぇか。」
階段の下から智が「ん？」て顔で俺を見上げて、「ただいま」と優しく微笑んだ。
「ん。おかえり。」
力なく階段を一段ずつゆっくりと下りながら、彼女のさっきの横顔を思い出していた。
とても悲しそうな。でも…どこか悲しさだけじゃない…暖かな瞳の色をしていた。
なんて、あの一瞬でわかるものか？最早、俺の想像の中の話なのかもしれないな。
「なんだ。カズ、今日早かったんじゃん。」
そう言いながら、階段を下りきった俺の手元を見て雅紀がわかりやすく驚いた表情を見せた。
「それ、出してきたりしてどうしたんだよ。」
「え？あー、うん。ちょっとね。」
そうだ。これを見て気が動転して、あんな風に追い出す形になったけど、もっとちゃんと話を聞けば良かったじゃねぇか。
この不思議な生活を続けて彼女のそばにいて、少なくとも悪い人間じゃないって事はわかってたのに。
「カズ？……大丈夫？」
雅紀は、何も言わずただ立ち尽くす俺の手からヒョイとケースを抜き去ると、リビングの方に歩きながらこう言った。
「あれ？見つかったの？」
見つかった？
何が？
「え…？」
依然としてその場に立ったままの俺を振り返って、「いや、だからさ」と振り向いた雅紀。
こちらを向いて開いたケースを「これ」と、俺に見えるように向けた。
「そんな…。」
そんなはずない。
そこにあるはずのないものを見て、慌てて駆け寄り奪うようにして箱を手に取った。
「なに。カズが見つけたんじゃなかったの？」
見つかるはずない。ただのよく似たモノが並んでるんだよ。
「…きっとそうだ。」
掠れた声でそう言った俺に、雅紀が「ん？何が？」と応えてくれたけど、それは無視して目の前のモノを急激に冷たくなったように感じる指先で摘んだ。
「……うそだ。こんなの。」
以前と変わらずキラリと光るそれには見慣れた刻印。間違いなく俺の結婚指輪だった。
あの日。
Aに二度と会えなくなってしまったあの日。
Aに向かって投げつけた俺の結婚指輪だ。
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リュリュ(プロフ) - asamiさん» asamiさん☆こちらでもあちらでもありがとうございます！長い時間かけたにも関わらず、最後を見届けてもらえて嬉しいです！またいつか…☆本当にありがとうございました！ (2019年1月23日 21時) (
レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
asami(プロフ) - お久しぶりです！待ってましたよ(^^)ありがとうございます！リュリュさんのお話大好きだから、これでおしまいだなんて寂しいです。。でも…また会えますよね？(^^)素敵なお話をありがとうございます！ (2019年1月23日 19時) (レス) id: d53227b1bf (このIDを非表示/違反報告)
リュリュ(プロフ) - うふさん» うふさん☆お返事遅くなりました。きゃー！涙雪！ありがとうございます。待っていてくださって嬉しいです。うふさんのコメントが優しさで溢れてて感激です。どうぞ最後までよろしくお願いします☆ (2018年5月30日 23時) (レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
うふ(プロフ) - リュリュさんおかえりなさい！お休みされてる間も私の大好きな涙雪を何度も読んでは、リュリュさんのことお待ちしていました(^-^)優しさが溢れるようなリュリュさんの作品が大好きです。このお話も楽しみにしています！ (2018年5月29日 21時) (レス) id: 70c23ef30e (このIDを非表示/違反報告)
リュリュ(プロフ) - はるさん» はるさん☆読んで頂けるだけで嬉しいのに、コメントまで…。いつもありがとうございます(*^^*)またお会いできて嬉しいです。最後までよろしくお願いします！ (2018年5月28日 13時) (レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リュリュ
| 作成日時：2016年12月30日 0時
