☆２２ ページ22
「雅ちゃん、ありゃ新手の食い逃げか？」
ちびこい丸メガネを鼻に乗せながら新聞を読んでたおっちゃんが、雅紀に笑いながら尋ねる。
「いや、食い逃げではないよね。食べてないし。」
雅紀が笑いながら答えると、おっちゃんも「そうか」と笑いながら頷いている。
「どうしちゃったんだろ。」
「あの客、今日初めて来たの？」
「うん。初めて。」
「ふーん。本当にイタズラだったりして。注文して食わずに逃げるとか地味な嫌がらせ。」
「そんな事、する様な子には見えなかったよ。」
………。
俺だってそんな事する様な子には見えなかったけどさ。
その場の雰囲気で言っちゃう時とかない？
ほら、おっちゃん達も笑ってくれてんじゃん。
でも雅紀だけはずっとドアの方を見て黙ってた。
しばらくしてカウンターから出た雅紀が、Aの座ってた席の皿を下げようとした時。
カランカランと音を立てて開いたドアから、Aが肩で息をしながら入って来て。
皿を持ち上げようとしてる雅紀に近付くと、腕を掴んで「ごめんなさい！食べます！！」って頭を下げた。
「あ、うん。えっと…大丈夫？」
雅紀の問いに頷くと、雅紀の後ろをぐるりと回って椅子に座りゴクゴクと水を一気飲みした後、大きく息を吐いてからもう一度「ごめんなさい」と頭を下げた。
彼女の話を聞くと、数日前に店の近くの画材屋さんでカゴにたくさんの商品を詰め込み精算しようとするもお金が足りず。
その時に後ろに並んでた老紳士が出してくれたらしくて。
返さなくていいよと言われたものの、どうにかお金を返そうと、ずっとこの辺を探してたらしい。
でも今日は風が冷たくて、たまたま見つけたこの店なら通りが見えるからと、入ってみたらしい。
そしたら運良くお目当の人が通りかかった、と。
「良かったね！」
「はい！良かったです！本当に突然飛び出してごめんなさい。じゃあ、改めて…いただきます！」
元気にそう言うと、やっぱりケチャップ味のスパゲティを最初に口に放り込み、そこからは見てる方も気持ちいいくらいの食べっぷりで、あっという間に完食してしまった。
そして、落ち着く間もなく会計を済ませたAが店を出た後、どこからともなく湧き上がる笑い声。
さっきのおっちゃんも、「忙しないな」って言いながらニコニコ笑ってた。
「ドタバタだね。」
「うん。…可愛かったね。」
きっと、雅紀はその時にはもう惹かれてたんだ。俺も、ね。
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リュリュ(プロフ) - asamiさん» asamiさん☆こちらでもあちらでもありがとうございます！長い時間かけたにも関わらず、最後を見届けてもらえて嬉しいです！またいつか…☆本当にありがとうございました！ (2019年1月23日 21時) (
レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
asami(プロフ) - お久しぶりです！待ってましたよ(^^)ありがとうございます！リュリュさんのお話大好きだから、これでおしまいだなんて寂しいです。。でも…また会えますよね？(^^)素敵なお話をありがとうございます！ (2019年1月23日 19時) (レス) id: d53227b1bf (このIDを非表示/違反報告)
リュリュ(プロフ) - うふさん» うふさん☆お返事遅くなりました。きゃー！涙雪！ありがとうございます。待っていてくださって嬉しいです。うふさんのコメントが優しさで溢れてて感激です。どうぞ最後までよろしくお願いします☆ (2018年5月30日 23時) (レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
うふ(プロフ) - リュリュさんおかえりなさい！お休みされてる間も私の大好きな涙雪を何度も読んでは、リュリュさんのことお待ちしていました(^-^)優しさが溢れるようなリュリュさんの作品が大好きです。このお話も楽しみにしています！ (2018年5月29日 21時) (レス) id: 70c23ef30e (このIDを非表示/違反報告)
リュリュ(プロフ) - はるさん» はるさん☆読んで頂けるだけで嬉しいのに、コメントまで…。いつもありがとうございます(*^^*)またお会いできて嬉しいです。最後までよろしくお願いします！ (2018年5月28日 13時) (レス) id: 533f88702c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リュリュ
| 作成日時：2016年12月30日 0時
