act 51. かわいい ページ4
「美味しかった！」
キヨに紹介してもらった焼肉店をでたら、もう外は真っ暗で、星がちらほらと光っていた。
「うまかったー」
「キヨ凄いね！ こんな美味しいとこ知ってるなんて！ さすが！」
「なんだそれ、別にすごくねぇよ」
キヨは、会話をなるべく切らさないように話してくれる。私はつられて、口が動く。
すごいなぁ、ほんとに。
そう思って見上げていると、キヨがこっちを見て笑った。
「なに？」
私が聞くと、別にぃと返される。え、もしかして顔にネギとかくっついてたかも……。恥ずかしくなって顔を逸らした。
「顔に、なんかついてた！？」
「ううん」
「じゃあなに？」
「……いや、何でもない！」
「えっ？ なに、今の間！？」
「……すっげー失礼なこと言っていいの？」
「は！？ なにそれ！」
ニヤつくキヨに、思わず顔を向けると、彼は笑いながら、私に言った。
「かわいい」
「へっ……！？」
ぼんっ。顔が真っ赤になる音が聞こえた気がした。
そのくらい、私の顔は急激に熱くなっていって。
「な、何言って……」
言葉を失ってしまった。てか、失礼も何も、ただただ恥ずかしい。
「いや、まんま。かわいいもんはかわいい」
「やめてやめて、恥ずかしい」
「やめない」
キヨは顔をグイッと近づけてきて、私の目をまっすぐ見て言った。
「ずっと思ってたけど、めっちゃかわいい」
今日何回目か分からない言葉に、私の頭の中はパンク寸前だった。
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作者名：咲希さん | 作成日時：2021年3月27日 10時
