episode7. ページ9
あかねに連れてこられたのは、とあるライブ会場。
どうやらあかねの推しの歌い手さんがライブをするらしく、私はそれにまんまと付き合わされた。
「チケ代は奢るから、ペンラだけ買ってこい」
そう言われて、長すぎる行列に並ばされている私。とても浮いている、気がするのはどうしてだろうね。
あかねは、開場待ちの列の1番前で、携帯をいじって待っている。推しへの投資はもう事前購入で済ませたらしい。かわいらしいワンピースの上には、グッズのタオルがかかっている。さらに言えば持っている小さいショルダーバッグもライブのグッズだった。
グッズの列は進みが早く、あっという間に私の番。さっさとペンライトを買って、白い目を浴びながらあかねのいる場所へと戻った。
それからはあっという間で、ライブが終わった頃には、オタク気質の私はすっかり彼の虜になっていた。
「めっちゃ良かったぁ〜」
「でしょ？ まふさんは最強なんだから」
そう2人で笑いあっていると、ふと、見覚えのある赤い髪が目に入った。
「……？」
キヨ……かと思ったが、わんちゃん自分の視聴者が居そうなまふまふさんのライブ会場に、ノコノコと来るはずないか。
私は見なかったことにして、あかねと近くのカフェでライブを振り返ることにした。
そのまま会場を出ようとすると……
「あのっ！ キヨさん、ですよね！？」
人一倍大きな、女の子の声がした。
あかねと一緒に振り返ると、先程のキヨと思われる人が、いかにもあたキヨっぽいかわいらしい格好の女の子に話しかけられていた。
「え、ええと、あの……」
彼は周りをキョロキョロと見渡して戸惑っている。違います、一言そう言ってしまえばいいのに。
……でも、ほんとにキヨみたい。髪も赤いし、てか、身長めっちゃ高いし。
そう思わず一連の流れを見つめていると、彼と目が合った。
え？ と思ったのもつかの間、すいません急いでるんで、と言うと、次の瞬間、私のところまで真っ直ぐと歩いてきた。
「なんか、こっち向かってきてない？」
あかねが言い終えた頃には、彼は目の前にいて。
私の手を握りしめると、行こう、と言って歩き出した。
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作者名：咲希さん | 作成日時：2020年12月22日 15時
