【実況者】その夢は醒めないままで【ky】 (ページ25)

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episode23. ページ25

「落ち着いた？」

キヨの優しさに散々甘えたあと、私はソファに座っていた。ぶんぶんと首を縦に振ると、キヨはホッとしたように笑って、じゃあ本題ね、と言い出した。

そうだった、私は呼び出されてここまで来たんだった。

「とりあえずー、しばらくは俺の彼女ムーブを取ってもらおうかなって」

「えっ」

「んで、ほとぼりが冷めた頃に、別れましたーってさりげなく、いこうかなと」

「……なるほど」

「ごめんね」

「えっ？」

「巻き込んじゃってごめん。俺、軽率に行動しすぎてた」

そう言うキヨは、本当に反省しているようだ。耳としっぽがついていたなら、それはどちらも垂れ下がっているだろう。そんな様子だった。

「大丈夫です。私、今まで生きてきてこんなイベント発生するなんて思いませんでした」

「イベント？リアルだから、ゲームじゃないし」

私が言う冗談を、笑ってくれたキヨ。
もうしんでもいい、いや、推しの彼女ムーブ、ぶっちゃけオタクとしてはとても嬉しい。美味しい。
まだしぬ訳にはいかない。生きねば。

「惚れんなよ？」

ケツイを胸に立ち上がったとき、キヨに言われた。
その顔は、まるで本気で落としに来るかのようで、少しだけドキッとした。

「むしろキヨさんに惚れて忘れたいぐらい」

私がそう笑った時、キヨは真面目な顔をした。

「忘れちまえ、既婚者に恋しててもつれぇから」

そう言って、頭を撫でてくれた。