【実況者】その夢は醒めないままで【ky】 (ページ24)

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episode22. ページ24

ある日の午後。部屋においでよ、と言われたからうっかり行った推しの家で、衝撃の発言を聞くことになった。

「あのさぁ、やっぱりガッチさんのこと好きなの？」

その質問に、私の時が止まる。

「……は？」

数秒、間を置いて出た言葉は、推しに放つにはとてもとても低い声で。

「違うの？」

そんなのはお構い無しに、推し、キヨはしゃべり続ける。

「最初見たとき、あ、ガッチさんのこと好きなのかなーって思ったんだけど」

「いや、それは、結構、昔の話……です…」

焦って否定したものの、どこか思い出に出来ずにいた私の心が、だらだらと音を立てて流れ出す。

「まあ、好きだったんですけど、でも、気づいた時にはほら、奥様が、いらっしゃったので」

聞かれてもいないのに、どんどん喋る私。ああもう、ただのキモイ女になってしまう。

「再会したのも最近で、それまでは忘れてるつもりだったんですけど、けど、ゲーム実況者なんて、見ちゃう、観ちゃうじゃないですか」

ああもう、誰かこの口を止めて。

「ずっと、ファンだって、推しのうちの1人だって、そう思い込んでたんですけど……、やっぱ、好きだったんだなぁって…」

その時、暖かいキヨの腕が、私を優しく包み込んだ。

「……なんか、ごめん」

「いや、こちらこそ、急にすみません……ん？」

キヨを押しのけようとするも、さすがは成人男性。全然離れないどころか、むしろ力が強くなっていく。

「あの……は、離してくだ……」

「やだ」

「どうして！？」

「タメでいいって言ったのに、ずっと敬語だし……」

「そこ！？」

「あと…」

どこか寂しそうな声で、キヨはさらに力を込めた。

「泣かれるのは、困る……」

そう言われて気がついた。

私の頬は、涙で濡れていた。