【実況者】その夢は醒めないままで【ky】 (ページ27)

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episode25. ページ27

彼女ムーブ、と言ってもやることは特になかった。
本名だって知らないし(表札なかった)、毎日通ってあげることもないし、ベッタリくっついて暮らすわけでもないし、キヨのヤバいファンに特定されてビビったけど、いつでも凸出来るからな、という脅し文句だけで特になにかされるわけでもなく……。
私が意外と大手で働いてるから逆にビビったのかな、なんて楽天的に考えていた。

そんなある日の事だった。

「今度飯行こーよ」

そう言ったキヨは、いつもよりもニコニコしていた。

「え、いいけど……」

「近所にできた焼肉屋がさ、個室だし美味いらしいんだよね」

「なるほど、行ってみたいのね」

「そうそう！んで、せっかくだから俺の友達も呼ぼうかなって」

「へ、友達って……」

「まふだよ、まふまふ。知ってるっしょ？」

「いや、名前は存じ上げてますけど、歌ってみたも動画もろくに観たことないんでほとんど知らない……」

「あ、そうなの？まあ大丈夫っしょ」

そう軽く言うキヨ。いやいや、そんな簡単に決めていいのですか？

「大丈夫なの……？」

「自分のことろくに知らないからって怒るやつじゃねぇよ。そんな心配ならあの子呼んでもいいよ」

「あの子？」

「まふのライブ一緒に行ってたでしょ」

「あ、あかねのこと？」

「あかねちゃんって言うんだ」

「あ、うん。でも、いいの？」

「知らね」

「ええっ」

胃が痛くなったのは、言うまでもない。