好きな人【沢北栄治】 (ページ10)

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「痩せなきゃって思ってるんだけどね、やめられないんだよね。」

それ以上どこを痩せるというのか。
普段どんだけ食ってるか知らないけど、むしろもっといっぱい食った方がいいと思う。

「沢北くんは何か食べる？」

「オレは大丈夫です。」

「そっか、じゃあ私レジ行ってくるね。」

そう言って、苺味のポッキーをレジに持っていこうとするAさんを呼び止める。

「それ、ください。」

「え？」

ポカンとしているAさんの手から、ポッキーを取りレジへと並ぶ。

「え、いいよ、自分で買うよ」

「待っててくれたお礼です。」

「でも、」と何か言いたげだったけど、
その声は店員さんの「次の方どうぞ」という声にかき消され、オレが買うことができた。

「お礼になってるか分かりませんけど、どうぞ。」

「別にお礼とか要らなかったのに。でも、ありがとう。」

「ごめん」より「ありがとう」って言ってくれるあたり流石だと思う。
別に感謝されたいわけじゃないけど、男は、というか人って
「ありがとう」って言われる方が何倍も嬉しいから。

ていうかお礼のつもりで買ったのになんで感謝されてんだ、オレ。