好きな人【沢北栄治】 (ページ8)

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＊

「―――好きです。付き合って下さい。」

オレの予想は的中で、やっぱり告白だった。
顔を真っ赤にして気持ちを伝えてくれる相手に、申し訳なさはあるけど
オレの気持ちが揺らぐことはない。

「ごめん。気持ちには応えられない。」

気持ちが嬉しいとも、ありがとうとも言わない。
オレはそれが優しさだとは思わない。

はっきりと断る方が相手も次に進めると思う。

「そう、ですよね… 引きとめちゃってすみませんでした。
　部活で疲れてると思うのに、聞いてくれてありがとうございます。」

そう言う女子に軽く会釈をして、Aさんの元へと戻ろうとしたとき、
あのっ、と再び声を掛けられた。

「…A先輩とお付き合いされてるんですか、？」

さすがAさん。
女子が少ないからってのもあるんだろうけど、名前を知られてるとか。

「付き合ってないよ」

…今は、と心の中で言ったあと、
くるりと身体の向きを180度回転させ、今度こそAさんの元へ戻った。