63話 ページ15
「一青?」
『キャプテン?』
夜。昇降口に佇む水城に気付いた円堂は、微かに目を丸くすると不思議そうに彼女の名前を呼ぶ。水城はゆっくりとした動作で肩越しに振り返り、円堂を視界に入れると頬を緩ませた。
「どうしたんだ?こんな所で立ち止まって」
『いや、』
「いいよもう!!どうせ俺なんてこれ以上やったって!!!」
悲痛な叫びが水城の言葉を遮る。口を閉じるとその声の主がいるグラウンドの方に顔を向け、そしてまた円堂の方に戻す。円堂はああ、と納得したように頷いた。水城の方が少し早かっただけで、どうやら降りてきた理由は同じのようだった。
『緑川君、最近思い詰めてるようだから…』
「そうなんだよなあ…」
2人はそっと昇降口を出て基山と緑川に目を向ける。基山とグラウンドにいるのが部屋から見えただけだったが、最近の彼は根を詰めすぎているから少し気がかりだったのだ。練習時間だけでは不十分なのか、練習の後も夕食の時間ぎりぎりまで1人で自主練習に取り組む姿はがむしゃらと形容する他なかった。
「そもそも、エイリア学園のセカンドランクチームにいた俺なんかが選ばれたのが間違いだったんだ…!」
緑川が口にしたのはかつての闇。実力でランク付けされ、家族同然に過ごしていた友人を畏れ敬い、試合に負ければ追放。特に緑川、レーゼは位の最も低いセカンドランクチームジェミニストームのキャプテンであったから、グランとはまた異なる部分で負荷が大きかったことだろう。
焦っていた。着々と力を付けていくチームメイトに、その中で弱いままの自分に。だから誰よりも練習に打ち込んで、ひたすら走り続けて、執念を燃やして。なのに、体に無理をさせすぎたのか本来の力も練習の成果も肝心なときに出せなくなる始末。悪循環だった。
「緑川…」
円堂が思わず一歩踏み出した、そのとき
「間違いか…俺はそうは思わないけどね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1671人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからまた読み直そうと思います！ご自身のペースで更新してくださると嬉しいです(◍•ᴗ•◍) (12月28日 21時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - とても面白かっです！！続きが気になりすぎて夜しか眠れません。更新よろしくお願いします (12月15日 18時) (レス) id: 51c9a307dd (このIDを非表示/違反報告)
サカナ(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます！思わず一気見しちゃいました笑更新楽しみにしてます！ (10月29日 22時) (レス) @page29 id: ff0b9e3173 (このIDを非表示/違反報告)
テオ - とても面白かったです！続きが気になります！！また書いてくれるのを楽しみにまっています！ (8月31日 9時) (レス) @page29 id: 715df6a9c3 (このIDを非表示/違反報告)
チョコドーナツ(プロフ) - またまた戻って来てしまいました……！イナズマイレブン熱はいつになっても冷めないようです笑何度読んでも面白くて最高です！ (8月21日 19時) (レス) id: 915577a7d1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：不二市
| 作成日時：2019年1月7日 3時
